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「スキルデータ」の活用が製造業にもたらすメリットとは 実践事例と注意点を解説ゼロから学ぶ! 製造業のスキルマネジメント(3)(2/4 ページ)

製造業を取り巻く環境が変わる中、力量管理で扱う人材情報に注目し、戦略的な人材育成/配置や組織力強化に活用する企業が増えてきました。本連載では組織的なデータ活用による発展的な力量管理を「スキルマネジメント」と呼び、その考え方や取り組み方を解説していきます。

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スキルデータで業務課題を解決した企業事例

 それではここからは、製造業の先進企業が取り組んでいる、スキルデータの活用事例をご紹介します。

(1)人員配置と不足スキルを可視化し、業務を脱属人化

 産業機器系の製品を扱っている企業で、約200人が在籍する製造、品質保証部門を対象とした事例です。

 産業機器の製造は品質要求が高く、工程ごとに高いスキルレベルが求められます。さらに、期初は部品加工などの前工程、期末は組み立てや試験といった後工程に負荷が集中し、局所的に多忙になりやすいことが特徴的です。この企業も例外ではありませんでした。

 当時、以下の2つが人材面での課題として挙がっていました。

  1. 製造と品質保証部門の垣根を越えて頻繁に応援を送り合っているが、応援先で誰をどの工程に割り当てるべきか分からない(アサインが熟練者の勘と経験に依存しているため再現性がない)
  2. 割り当てられたメンバーのスキルが不足しており、結局重要な工程を任せることができない

 上記2つの課題を解決するために、この企業では下記2つの目的でスキルデータの活用を目指しました。

  1. スキルデータを基に、事前に必要となる応援人数を割り出し、要請された応援に適したスキルを持つ人材を発見したい
  2. 応援に必要となるスキルを持つ人材が不足している場合には、計画的な人材育成を行ってスキルを継承させたい

 これらの目的を踏まえて、以下3点の施策を実行することにしました。

  1. チームごとに認識がバラバラであったスキルの定義を統合し、チーム間で共通するコア作業スキルや資格、それ以外の固有のスキルに切り分けて再定義
  2. スキルマップ上で、スキル単位で工程に必要な人数を算出し、保有人数との差分をとることで、チーム内での不足人数を算出する
  3. 共通スキルを軸に、工程で求められる複数のスキルを、必要なレベルで保有するメンバーを組織横断で検索可能にする
スキルデータを基に実行した3つの施策
スキルデータを基に実行した3つの施策[クリックして拡大] 出所:スキルノート

 施策の結果、この企業ではスキルデータに基づいて必要な応援人数を定量的に算出して、要請が出せるようになりました。さらに、応援要請の検討にかかる工数を減らすとともに、将来の応援に備えた多能工の育成施策にもつなげられるようになったのです。

 また、勘や経験といった定性的/感覚的な情報ではなく、「保有スキル」という定量的な情報を基にしてメンバーを選定できるようになったことで、熟練技術者に限らず、誰もが適切な配置判断を下せるようになりました。もちろん、配置されたメンバーも従来の方法に比べて十分に力を発揮して成果を出しやすくなりました。

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