工場のスマート化で高まるサイバーリスク、経産省が対策の要点など公開:産業制御システムのセキュリティ
経済産業省は「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン【別冊:スマート化を進める上でのポイント】」を公表した。
経済産業省は2024年4月4日、工場のスマート化を進める際にセキュリティの観点から留意すべき点や対策のポイントをまとめた「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン【別冊:スマート化を進める上でのポイント】」(以下、ガイドライン別冊)を公表した。
工場のスマート化を進める際の留意点や具体例を提示
製造現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みやIoT(モノのインターネット)機器の導入が進むにつれて、従来は外部に対して閉じられていた工場内のネットワークが、関連企業やインターネットと接続するケースが増え、サイバー攻撃を受けるリスクが高まってきている。
2022年にはトヨタ自動車の一次取引先である小島プレス工業がランサムウェアによる攻撃を受け、トヨタ自動車の国内14工場が稼働停止した。企業は自社だけでなくサプライチェーンリスクも踏まえて、サイバーセキュリティ対策に取り組む必要性が出ている。
こういった状況を受けて、経済産業省では2022年に「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」(以下、ガイドライン本編)を公表した。ガイドライン本編では、工場システムのセキュリティ対策を実施する上で、参考となるような考え方やステップを示している。
今回、新たに公表したガイドライン別冊は、工場のスマート化の流れを受けたものだ。データの収集や分析、活用を高度に進め、工場のスマート化を図ることで、製造工程のさらなる効率化などが可能になるが、外部ネットワークとの接続が増え、サプライチェーンも広がることでセキュリティのリスクも増大する。
ガイドライン別冊では、主に工場のスマート化を進める企業のIT関係部門や生産関係部門、DX担当部門などを読者に想定。ガイドライン本編に示した各ステップの対策における、業務内容や重要度が同等であるゾーンの設定や、サプライチェーンの広がりに伴う責任分界や役割分担など、スマート化を進める際の留意点や具体例を示している。
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