過酷な資源ごみのビン色選別を自動化、PFUがイメージスキャナー技術から新規事業:人工知能ニュース(1/2 ページ)
PFUは、廃棄物の分別を自動化する「廃棄物分別特化AIエンジン」シリーズの第1弾として、ビンの色選別を自動化する「Raptor VISION BOTTLE」の提供を開始する。世界シェアトップのイメージスキャナー開発で培った独自アルゴリズムによる99.8%という高い認識精度が最大の特徴だ。
PFUは2024年4月10日、廃棄物の分別を自動化する「廃棄物分別特化AIエンジン」シリーズの第1弾として、ビンの色選別を自動化する「Raptor VISION BOTTLE」の提供を開始すると発表した。世界シェアトップのイメージスキャナー開発で培った光学技術/画像認識技術を応用した独自アルゴリズムによる99.8%という高い認識精度が最大の特徴。共創パートナーである工作機械メーカーの高松機械工業が開発した「資源ごみAI自動選別機〜AI・B-sort〜」と組み合わせたシステムは、競合製品と比べて導入価格を40%削減可能であり、人手による選別と比べた投資対効果でも20%削減できるとしている。今後は、全国で3000以上ある産業廃棄物の中間処理施設向けにRaptor VISION BOTTLEを提案していくとともに、ビンの色選別以外を対象とした新たな廃棄物分別特化AIエンジンの開発も並行して進めていく方針である。
「Raptor VISION BOTTLE」と組み合わせた「資源ごみAI自動選別機〜AI・B-sort〜」の外観。写真左側にあるのがRaptor VISION BOTTLEのユニットだ[クリックで拡大] 出所:PFU
Raptor VISION BOTTLEは、PFUが新規事業開拓を進める中で同社の光学技術/画像認識技術を廃棄物処理業界のDX推進に役立てられる可能性に着目し、社外の新事業育成プログラムやピッチイベントを経て2020年に取り組みを始めた事業である。「AI(人工知能)などを活用した自動化はさまざまな分野で進んでおり、資源ごみの選別プロセスでもペットボトルやスチール缶、アルミ缶は機械による自動化が進んでいる。その一方で、ビンの色選別については現在も人手による作業が一般的。作業内容が複雑で過酷なこともあって人手不足は深刻であり、自動化による省人化は喫緊の課題だ」(PFU Raptor事業開発部の担当者)という。
Raptor VISION BOTTLEの特徴は「高精度な認識精度」「AIモデル再学習機能」「各種ツール群」の3つに分けられる。1つ目の「高精度な認識精度」は、光学設計の知見に基づき多種多様なビンの特徴を浮き彫りにする複合照明技術と、画像処理のノウハウを生かして複数の画像からビンの特徴を融合して認識処理を行う特徴融合認識技術、選別対象である透明ビン、茶色ビン、他色ビンと、それら以外の選別除外対象のビンを見分ける禁忌品認識技術から構成されている。2023年6月時点での認識精度は99.8%で、関連特許も18件を出願済みである。
2つ目の「AIモデル再学習機能」は、新商品の市場投入などによって起こる認識すべきビンの種類の変化に対応してAIモデルをアップデートし、認識精度を維持するための機能である。ユーザーの現場から取得した画像データを定期的にクラウドにアップロードし、これらの画像データを用いてPFU側で再学習を行ったAIモデルによってアップデートを行う。この機能により、ビンの色や形が多様化しても認識精度の維持/向上を図れる。
3つ目の特徴である「各種ツール群」としては、ビンの色ごとの処理数や処理率などを見える化する「ダッシュボードツール」を提供する。これを活用すれば、進捗状況や過去の実績把握などリソースの最適化につなげられる。「AIモデル再学習機能とダッシュボードツールはネットワーク接続が前提になる。現場へのネットワーク接続を望まない顧客は一定数いるものの、得られるメリットは大きいのでぜひ活用していただきたい」(同担当者)。また、AIモデル再学習に必要なアノテーション作業を半自動化する「アノテーションツール」も開発する予定だ。
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