人手不足が深刻な物流を自社の武器へ、アパレル企業が導入した高効率自動倉庫:物流のスマート化(1/2 ページ)
約50のアパレルブランドを展開するパルの直営ECサイト「PAL CLOSET」向けの物流拠点として「PAL CLOSET Robotics Solution Center」が稼働を開始した。
約50のアパレルブランドを展開するパルの直営ECサイト「PAL CLOSET」向けの物流拠点として「PAL CLOSET Robotics Solution Center」(PRSC、神奈川県平塚市)が2024年4月3日に稼働を開始したと発表し、報道陣向けに同日内覧会を開催した。PRSCはPAL CLOSETの在庫管理や注文処理、梱包、配送までを担う。そこに導入されたのがフランスのExotecが開発した自動倉庫「Skypodシステム」だ。
PRSCが入居したのは、大和ハウス工業のマルチテナント型倉庫「DPL平塚」。2022年に完成したDPL平塚は、工場で製造された部材を現場で組み立てるPCaPC(プレキャストプレストレストコンクリート)造りの4階建てで免震構造を持つ。敷地面積は5万4245m2、総延べ床面積は12万1317m2で、全階にトラックが接車できるようになっている。
東名高速道路の厚木IC(インターチェンジ)や新東名高速道路の厚木南ICからほど近いなど交通の要衝に立地している。大和ハウス工業 東京本店 建築事業部 事業部長の村上泰規氏は「トラックドライバーの残業時間が制限される中、DPL平塚は東名阪の玄関口となるエリアにあり、無駄のない効率的な輸送ネットワークを構築していただける」と話す。さらに託児所やコンビニエンスストア、カフェテリアなども併設している。
PRSCはこれまで複数に分かれていた物流拠点を集約する形でDPL平塚の3階に開設された。その中の2300m2のスペースに、Skypodシステムを取り入れている。
Skypodシステムは自動搬送ロボット「Skypod」が商品を保管するラックと、商品の入出庫を行うステーションの間を行き来する自動ピッキングソリューションだ。Skypodは床面の移動だけでなく、ラックの昇り降りも自ら行い、移動商品が入ったビンやトレイを運ぶ。ロボットは1時間ごとに充電ステーションに行き5分ほど給電する。
今回は倉庫の天井高に合わせた高さ5mのラックを設置し、約2万6000のコンテナを保管している。ロボットは約50台が稼働しており、従来比で約3倍の高密度保管、3倍の出荷能力を実現した。
パル 取締役 専務執行役員 プロモーション推進部部長 コミュニケーションデザイン室室長 WEB事業推進室室長の堀田覚氏は「10年前はPAL CLOSETの売上高が約10億円だったが、2023年には約200億円に達して20倍に成長した。ただ、倉庫オペレーションは変わっておらず、人員の確保が困難になり、人件費の高騰も見込まれるなど喫緊の課題として捉えていた。今後のわれわれの成長においてECは欠かせないパーツであり、2028年度に他社ECも含めてEC全体で1000億円の売り上げという目標に向けた基盤をしっかりと固めないといけないということで決断した」と背景を話す。
売上高1000億円の内、PAL CLOSET単体で現状の約2.5倍となる500億円の売り上げを目指している。従来の施設では多層階に収納している商品を全て人手でピッキングしていた。PRSCでも検品や梱包など人手が必要な箇所はまだ残るが、「人手に頼っていると今の2.5倍の人員を確保するのは現実的ではなく、この問題を取り除く必要があった。特にピッキングが1番人手必要になってくるため、(Skypodシステムで)そこを削減できるのは大きなポイントだ」(堀田氏)。
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