東邦チタニウムが成長戦略を発表、2030年度に2022年度比で売上高と利益を倍増へ:材料技術(1/2 ページ)
東邦チタニウムが2024年度以降の成長戦略や今後の展望などについて説明。足元で需要旺盛な航空機向けの高純度のスポンジチタンを軸に事業拡大を進め、2030年度の業績として2022年度実績の倍増以上となる売上高1700億円、経常利益250億円という目標を掲げた。
東邦チタニウムは2024年3月29日、横浜市西区の本社オフィスで会見を開き、2024年度以降の成長戦略や今後の展望などについて説明した。足元で需要旺盛な航空機向けの高純度のスポンジチタンを軸に事業拡大を進め、2030年度の業績として2022年度実績の倍増以上となる売上高1700億円、経常利益250億円という目標を掲げた。
1953年に創業した東邦チタニウムは、JX金属傘下(出資比率50.38%)の非鉄金属メーカーである。2020年まで本社を構えていた創業の地である茅ケ崎工場(神奈川県茅ケ崎市)と若松工場(北九州市若松区)で生産している高純度スポンジチタンを中心とする金属チタンが主力事業だ。この他、チタン鉱石からスポンジチタンを生産するプロセスで必要となる塩化/還元の技術を横展開して立ち上げた、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン製造用触媒と中心とする触媒事業、積層セラミックコンデンサーの材料となる超微粉ニッケルを扱う化学品事業がある。
東邦チタニウム 副社長執行役員の結城典夫氏は「主力の金属チタン事業は、化学プラントの熱交換機や瓦屋根を代替する軽量のチタン瓦、半導体用ターゲット材などさまざまな用途があるが、足元で最も重要なのが航空機向けの高純度スポンジチタンだ。世界でも製造できる企業は少なく、国内も当社を含めて2社に限られる。最大手はロシア企業だったが、ロシアのウクライナ侵攻に起因する調達回避により東邦チタニウムの採用が拡大している」と語る。
同社の2022年度の連結業績は、売上高が前年度比44.7%増の803億5000万円、営業利益が同約2倍の106億900万円、経常利益が同約2倍の105億3000万円、当期純利益が同約2倍の75億円。売上高における3事業の内訳は、金属チタン事業が543億円9000万円、触媒事業が87億800万円、化学品事業が171億800万円となっており、金属チタン事業が70%弱を占めている。これは、航空機向けの高純度のスポンジチタンがコロナ禍における需要急減から回復軌道に乗ったことに加え、先述したロシア企業からの調達回避により東邦チタニウムの採用が拡大し、金属チタン事業の売上高が大きく伸びているためだ。実際に、金属チタン事業の売上高推移は、コロナ禍前の2019年度が291億1700万円だったのに対し、2020年度には172億3000万円に落ち込んだものの、2021年度に314億3000万円にV字回復し、2022年度はさらに大きな伸びを見せて543億円9000万円となった。2024年度の売上高も599億円を予想しており「航空機大手2社の新造機需要見通しから見ても年率6〜7%で伸びるだろう。これまで難しかった価格見直しも進められている状況」(結城氏)だという。
金属チタン事業の主な生産拠点は茅ケ崎工場と若宮工場だ。創業当初の茅ケ崎工場の年間生産規模は240トンだったが、3年後には1800トンまで拡大し事業として軌道に乗った。同工場の年間生産規模はその後も拡大を続けており、足元では7600トンから9600トンになっている。2010年に新たなスポンジチタン生産拠点として操業を開始した若宮工場の年間生産規模は1万5600トン。チタン鉱石の塩化から生み出す二次原料となる四塩化チタンの生産も行っており、若宮工場からの四塩化チタン供給によって茅ケ崎工場の生産規模拡大を実現した。これらの他、サウジアラビア企業との合弁(東邦チタニウム35%出資)で同国ヤンブーに工場を展開している。年間生産規模のキャパシティーは若宮工場と同じ1万5600トンで、2023年末からフル稼働に入っているという。
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