製造業のWebマーケティング、社内の承認を得るために使える2つの強力な武器とは:間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(13)(2/2 ページ)
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第13回のテーマは「社内の承認を得るために使える2つの強力な武器」だ。
社内の承認を獲得するための2つの強力な武器
ここまでは、Webマーケティングを実施するにあたって障壁となる要因を紹介した。それでも担当者が熱意をもって、積極的にWebマーケティングに取り組みたい場合、まずやるべきことは、Webマーケティングの重要性についての理解と共感を得ることだ。この目的を達成するために、非常に強力な2つの武器を紹介する。
(1)発注者側のアンケート調査(大手メーカーの設計開発者アンケート)
この業界で新規顧客を獲得するために何よりも重要なのは、ユーザーがどのように新規の取引先を探しているかを理解することだ。ユーザーの行動心理を理解し、その上で自社がどうあるべきかを考えることで、自然とWebマーケティングの重要性が理解できるはずだ。
そこで活用できるのが、発注者側へのアンケート調査である。ユーザー側がどのように新規発注先を探しているのかを取材ベースでアンケート調査する。収集したアンケートには、営業のあるべき姿の答えが書かれていると言っても過言ではない。最も説得力のある材料となるはずだ。
参考資料:【ホームページで見られるのは実績だけ?】大手メーカー開発設計者のサプライヤー新規探索時の本音を調査
(2)実際に成果を上げている事例を紹介する
2つ目が事例の活用だ。(1)で収集したアンケートを活用するとともに、Webマーケティングで成果を出している事例を紹介することで、その有用性を証明できる。リスクをできるだけ避けたいと思うのは経営者としては当然のことだ。類似した業種での成功事例があれば共感を得やすくなる。単純なWebサイト制作事例ではなく、どのような成果につながっているかまでを説明している事例が好ましい。
参考資料:製造業のWebマーケティング導入事例
この2点をうまく活用すれば、ユーザー側の行動心理から、新規企業の探索方法、選定の流れまでの理解が深まり、Webを利用した訴求方法で成果を挙げている事例を通じて、その有用性を実証できる。こうした取り組みによって、マーケティングの重要性の理解と共感を得ることができるはずだ。
その他、社内承認に活用できる手法を紹介
他にも導入のハードルを下げるポイントが存在する。いくつかを紹介する。
スモールスタートの仕組みを作る
Webの重要性を理解してもらえたとして、いきなり自社のWebサイトのフルリニューアルを考えてはいないだろうか? もちろん重要性が十分に理解されているのであれば問題はない。しかし、まだ疑心暗鬼の目をしている人がいるならば、自社でスモールスタートできる仕組みを作り、有用性を証明してほしい。まずは予算を抑えてWebマーケティングの有用性を実証できたのであれば、全体のリニューアルにも承認を得やすくなるはずだ。
具体的なスモールスタートの手法として、現在のWebサイトの一部ページを改修する方法が考えられる。SEO対策による集客を目的としたコンテンツの充実化などでも効果は実証できる。「デザインが今風でないから問い合わせが来ない」と考えるのではなく、現状のサイトを改修し、効果を検証する余地があるはずだ。それならば予算数万〜数十万円程度でも実施できる。
効果測定の仕組みを作り見える化させる
施策の実施に伴う「ビフォーアフター」を可視化することも非常に重要だ。アクセス数、検索順位、問い合わせ件数、受注件数、受注金額などを、施策実施前後で比較して明確な数値で見せることができれば、経営者も安心して予算を組みやすくなる。アクセス数や検索順位、資料をダウンロードした企業名など、商談件数以前の数値も獲得できるため、展示会や商談会などよりも見込み客を把握しやすい。
外部の専門化を有効活用する
また、Webマーケティングの専門知識を持つ外部の専門家に支援を求めることで、社内の承認を得やすくなる可能性がある。予算獲得の前段階から信頼できる外部パートナーを巻き込むことで、専門的な視点での数値や根拠を盛り込み、企画書自体の質を向上できるからだ。何社かに相談し、戦略の全容を理解、共有できる外部パートナーが見つかれば、企画、制作、その後の運営までスムーズに遂行できるだろう。
以上、Webマーケティングの実施において社内承認を獲得するために役立つポイントを紹介した。製造業界にとってもWeb活用の重要度は増す一方で、まだまだ取り組みが進んでいない企業が多いのが現状だ。Webマーケティングを推進したくても社内の承認がなかなか取れない場合に、ぜひ試していただきたい。
⇒記事のご感想はこちらから
⇒本連載の目次はこちら
⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧
筆者紹介
小林正道
テクノポート株式会社 取締役
製造業のWebマーケティング支援を15年以上行っている。製造業への訪問実績は2000社を超える。幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規開拓営業の支援を行う。
『マーケティングスキル×Webスキル(SEO中心)×製造業に関する深い知識』
この3つのスキルを組み合わせることで独自の専門領域を作り、卓越した力を発揮する。
日本工業大学技術経営学修士(MOT)2023/3卒業。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ⇒連載「間違いだらけの製造業デジタルマーケティング」のバックナンバー
- 製造業でも急速に広まるデジタルマーケティング、得られる5つの価値とは
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第1回のテーマは「製造業がデジタルマーケティングで得られる価値」だ。 - 生き残る鍵は「個客理解」、サントリーが考えるwithコロナ時代のマーケティング
withコロナ時代をメーカーが生き抜くために、「個客理解」の重要性がこれまで以上に増しているとサントリー酒類は指摘する。AIなどを用いたDXを推進することで、顧客の価値観の変遷に合わせて柔軟にマーケティング戦略を構築していく必要がある。 - 社長はプロレーサー! ツーリングでマーケティング
機械切削の腕前も抜群なプロレーサー社長のマイクロモノづくりを紹介する。ツーリングやバイク教室もマーケティング活動の一環だ。 - これだけは知っておきたい! 「マーケティングって何?」(前編)
今回は、身近な存在のようだけど、いまひとつ理解しづらい「マーケティング」についての解説。T字型人材を目指すエンジニアなら、ちゃんと説明できるようになっておきたい。 - これだけは知っておきたい! 「マーケティングって何?」(後編)
マーケティングの基礎・後編では、「マーケティングミックス」について解説する。標的とした市場セグメントに、どのようにアプローチすればいいのだろうか。