インフィニオンが非車載マイコンをPSoCブランドに統合、エッジAIにも対応:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
インフィニオン テクノロジーズ ジャパンが、IoT向けマイコンと無線通信ICに関する事業戦略を説明。エッジAI向けマイコン「PSoC Edge」を皮切りに、同年内に「PSoC Control」「PSoC Connect」を順次投入し、非車載マイコンをPSoCブランドに統合する方針だ。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2024年3月1日、東京都内で会見を開き、IoT(モノのインターネット)向けマイコンと無線通信ICに関する事業戦略を説明した。IoT向けマイコンについては、「Embedded World 2024」(同年4月9〜11日、ドイツ・ニュルンベルグ)で正式発表するエッジAI(人工知能)向けマイコン「PSoC Edge」を皮切りに、同年内に「PSoC Control」「PSoC Connect」を順次投入し、非車載マイコンをPSoCブランドに統合する方針だ。無線通信ICも「AIROC」ブランドでWi-FiやBluetoothの最新規格に対応したコンボICを展開する計画である。
インフィニオン(Infineon Technologies)において、IoT向けマイコンと無線通信ICを手掛けるのがCSS(コネクテッドセキュアシステムズ)部門傘下のICW(IoT、Compute&Wireless)事業である。同社 ICW事業担当 エグゼクティブバイスプレジデントのサム・ジャハ(Sam Geha)氏は「IoTデバイスの台数は2027年に2022年比で43%増の430億台となり、2025年までにIoT機器が生成するデータ量は79.4ゼタバイト(1ゼタバイトは1兆GB)に達するなどIoT市場が拡大を続け、現代社会のさまざまな課題解決に役立っている。当社は自動車や産業、民生などの分野でバランスの取れたポートフォリオをそろえているが、この成長するIoT市場をキャッチアップする上で、ICW事業の果たす役割は極めて大きい」と語る。
実際に、インフィニオンのグローバル全体の売上高163億ユーロ(約2兆6600億円)のうちICW事業の売上高は約10億ユーロにすぎない。しかし、ICW事業が起点となってインフィニオンが得意とするパワー半導体やセンサー、セキュリティ系製品などに波及して生まれるIoT市場関連の売上高は全売上高の約15%に当たる約24億ユーロまで拡大する。また、ICW事業が対象とする市場規模は、2023年の124億ユーロから年率8%で成長を続け、2028年には185億ユーロに拡大すると見込んでいる。
旧サイプレスの「PSoC」を起点にポートフォリオを拡充
インフィニオンのICW事業は、旧サイプレス(Cypress Semiconductor)が2002年に発表したマイコンファミリー「PSoC」が起点になっている。その後サイプレスは2016年にブロードコム(Broadcom)のワイヤレス事業を買収し無線通信ICやその関連技術を手に入れた。サイプレスはインフィニオンが2020年4月にが買収したものの、ICW事業の展開は継続しており、さらにインフィニオンが産業機器向けに展開していた「XMCシリーズ」を加えてポートフォリオを拡充し続けている。
IoT市場にフォーカスするICW事業が今後注力していくのがエッジAIだ。ジャハ氏は「インテリジェントなIoTデバイスであるエッジAIが、ネットワークやコンピューティング、エネルギーのリソースを最適に利用する上でカギになってくる」と強調する。機械学習(ML)モデルの推論実行が可能なエッジAIデバイスの市場は、2023年の10億台から年率32%で成長し、2028年には41億台まで伸びるという調査結果もある。
ICW事業は、PSoCブランドで培ったマイコンと、世界シェア2位でスマートフォン向けなどで多くの採用実績を持つWi-Fi/BluetoothコンボICなどを強みとしている。エッジAIへの対応に向けては、これらに加えて、MLツールチェーンを提供するImagimobを買収するなど関連のソフトウェアやツールといったエコシステムの拡充にも努めている。
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