「CES 2024」に見る、スマートホームの最新事情と未来予測:CES 2024レポート(2/4 ページ)
米国ラスベガスで開催された「CES 2024」では、スペースが大幅な増床となったスマートホーム関連の展示が注目を集めた。本稿では、国内スマートホーム関連スタートアップの雄であるアクセルラボ CTOの青木継孝氏による、スマートホーム関連の展示を中心としたCES 2024のレポートをお送りする。
スマートホーム関連の展示トレンド
それでは、スマートホーム関連のレポートに移ろう。
CES 2024のメイン会場は3つに分かれており、これらのうち「Tech West」がスマートホーム関連のメイン会場となる。今回は「Tech West」の半分程度がスマートホーム関連の展示となっており、前回と比較して大幅な増床となっていた。
展示スペースが拡大された理由の1つとして、従来のスマートホームデバイスだけではなく、家にあるさまざまなモノ(例えば、掃除機やマッサージ機など)がネットワークに接続され、「スマートホーム」の一環としてカテゴライズされた結果、エリアが拡大されたということが考えられる。
「Matter」はもはや当たり前の存在に
現在、スマートホーム業界で見逃せないキーワードとなっているのが「Matter(マター)」である。「Matter」とは、CSA(Connectivity Standards Alliance)が策定を進めているスマートホームの世界標準規格で、この規格によりメーカーはプラットフォームの枠を超えてIoT(モノのインターネット)機器間のシームレスな通信が可能となる。
Matterについては、MONOistに掲載されている解説記事も参考にしてほしい。
「Matter1.0」が発表されたのが2022年10月。そこから約1年3カ月の月日がたった。これまでは、Matterの概念や世界観のみ語られることが多かったが、今回のCES 2024では、いよいよ実際のMatter対応デバイスが見られるのではないか、と期待していた。
今回、実際にCES 2024に参加して感じたのは、Matter対応は特別な訴求ポイントとして展開されているわけではなく、もはや「当たり前」となり、顧客や市場の要望に応じてすぐにでも提供可能、という状況になっているということだった。コロナ禍以前のCESで「アレクサ対応」をアピールしていたデバイスが多かったのが今では当たり前に連携されているように、Matterも対応している事が当たり前になってきていると感じた。各ブースで「Matter対応しているのか?」と聞くと、ほとんどの場合「Ready(準備できている)」という回答が返ってきた。
スマートホームの展示傾向は“ソリューション提供”という内容になってきている。単に便利なホームコントロールという領域から、健康管理やペットケア、エネルギーマネジメント、高齢者見守り、セキュリティなど、より具体的なソリューションを訴求した内容にシフトしている。特にセキュリティと高齢者見守り(エイジテック)のブースが多く見られた。世界的に非常に注目されている市場である事は間違いないだろう。
「CES 2024」のスマートホーム関連の展示。Matterは既にReadyの状態であり、焦点は、セキュリティや高齢者見守りなどに代表されるエイジテックなどのソリューション提供に移行しつつある[クリックで拡大]
また、「家を俯瞰したマップ形式のUI」が複数社で見られた。ユーザー自身がスマートホームの操作画面を部屋ごとにカスタマイズできるようになっている。日本のスマートホーム企業ではまだ見かけないが、他でもこのようなマップビューを採用している出展企業が複数存在した。
ちなみに、日本の大手企業の出展もみられたが、例えばパナソニックはテクノロジーを重視した出展というよりも「地球環境に優しい、ヘルシーな企業」というイメージを押し出していたし、ソニーはホンダと提携したEV(電気自動車)の「AFEELA」を出展するなど、一定の存在感は示すもののスマートホーム関連の内容は見られなかった。アクセルラボも加盟している、Matter規格を運営する団体「CSA」への日本企業の参加もほとんど増えておらず、残念ながらスマートホーム関連での日本企業の存在感はほぼないと言っても過言ではない。
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