プリントヘッド生産能力を3倍へ、“技能こそ生命線”秋田エプソンの新工場棟:スマート工場最前線(2/3 ページ)
セイコーエプソンのグループ会社である秋田エプソンに新しい工場棟が完成した。投資額は約35億円で、インクジェットプリンタ用ヘッドの生産能力を増強する。
同一のプリントチップで多様なヘッド構成に対応
プリントヘッドの基本モジュールとなるのが、プリントチップだ。オフィス・ホーム向けのプリンタから、商業・産業向けの印刷機まで同一のプリントチップを用いており、プリントチップの数を増やすことで印刷スピードや印刷物の大きさを変えることができ、柔軟で多様なプリントヘッドの構成が可能になっている。
エプソンのインクジェットプリンタにおける、PrecisionCoreプリントヘッドの搭載比率はまだ2割程度だが、商業・産業向けプリンタや高速ラインヘッド搭載のインクジェット複合機などでは1台あたりの使用チップ数が多くなるため、今後搭載比率が増加することが見込まれている。
既にエプソンでは広丘事業所(長野県塩尻市)において、PrecisionCoreプリントチップ(ヘッド前工程)の生産増強に向けて新工場を開設しており、プリントヘッドの製造、組み立て(ヘッド後工程)を行う秋田エプソンの新工場棟もこの増産投資に対応する動きとなる。
高効率なモノづくりのベースは生産技術
秋田エプソンは1986年に腕時計用部品を生産する秋田オリエント精密として設立された。その後、腕時計用部品に加えてプリンタ用部品の製造を始め、2009年にはエプソンの完全子会社となって秋田エプソンとなった。現在はエプソンの国内製造拠点として、インクジェットプリントヘッドやドットプリンタ、腕時計の完成品や、それらのムーブメントなどを製造している。
秋田エプソン 代表取締役社長の平田潤氏は「われわれは自社開発の自動化ラインを使って高効率なモノづくりを行っている。そのために欠かせないのが、技術のベースとなっている生産技術だ。製品の製造以外に製品を製造する上で必要な金型や治具、生産設備の設計、開発ができる機能を有している」と話す。
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