プリントヘッド生産能力を3倍へ、“技能こそ生命線”秋田エプソンの新工場棟:スマート工場最前線(1/3 ページ)
セイコーエプソンのグループ会社である秋田エプソンに新しい工場棟が完成した。投資額は約35億円で、インクジェットプリンタ用ヘッドの生産能力を増強する。
セイコーエプソン(以下、エプソン)のグループ会社である秋田エプソン(秋田県湯沢市)は2023年12月22日、完成した新しい工場棟の開所式を行った。投資額は約35億円で、インクジェットプリンタ用ヘッドの生産能力を増強する。稼働は2024年1月を予定している。
エプソンは2021年に長期ビジョン「Epson 25 Renewed」を策定した。その中では、デジタル化の進展や新たな生活様式における分散化の加速などの外部環境の変化を踏まえ、『「省・小・精の技術」とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する』というビジョンステートメントを掲げている。「省・小・精の技術」には、より効率的に、より小さく、より精緻に、といった同社が創業当初から磨いてきた技術が込められており、これらをもって「環境」「DX」「共創」への取り組みを加速している。
「オフィス・ホーム」「商業・産業」を事業領域とするエプソンのプリンティングソリューション事業は、会社全体の売り上げの7割を担う中核事業だ。オフィス・ホームではコロナ禍以降、分散印刷のニーズが高まっており、さらに新興国に加え北米など先進国で大容量インクタンク搭載プリンタへの需要があり、インクジェットプリンタの需要増加が継続する見通しという。また、商業・産業向けでは、アナログ印刷からデジタル印刷へのシフトに伴い、インクジェットプリンタを使用したデジタル捺染など紙以外の分野での需要も増している。
エプソンのインクジェットプリンタの特徴は、電圧を加えると変形するピエゾ(圧電)素子の力でインクを吐出する独自の「マイクロピエゾ技術」だ。熱を使わないためインクの選択肢が多く、精度や耐久性、省電力にも優れている。1993年に初めて同技術を搭載したインクジェットプリンタを発売、現在は要素技術や高精度なMEMS製造技術を融合させた「PrecisionCore(プレシジョンコア)テクノロジー」として進化し、より高速、高画質の印刷を可能にしている。
セイコーエプソン 執行役員 プリンティングソリューションズ事業本部長の吉田潤吉氏は「環境に関して非常に敏感な市場に関しては、われわれのインクジェット技術の省電力、省資源といった環境性能に関するメッセージは響いていると感じている。地域によって多少の温度差はあるが、確実にインクジェット技術のよさが浸透してきているという感触がある」と語る。
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