日本の製造業は「過剰設備」なのか 固定資産の推移データを調べる:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(18)(1/2 ページ)
ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は「固定資産」に注目します。
国内製造業の「固定資産」を可視化しよう
今回は、日本の製造業の固定資産を見ていきます。参照するのはOECDの固定資産に関する統計データ(Fixed assets by activity and by asset, ISIC rev4)と、労働者数に関する統計データ(Population and employment by main activity)です。
ここでご紹介する固定資産とは、土地などの非生産資産ではなく、機械、設備や工場などの生産資産に分類されるものです。前回ご紹介した投資(総固定資本形成)は、これら固定資産への毎年の支出(フロー)となりますね。もちろん、固定資産は、経年劣化などによる損耗がありますので、その分は毎年価値として目減りしていきます。
このように損耗によって価値が目減りする分は、固定資本減耗と呼ばれます。企業の損益計算書でいえば、減価償却費に相当すると考えると分かりやすいのではないでしょうか。
企業からすると、総固定資本形成、すなわち投資によってプラスになる分と、固定資本減耗として目減りした価値が足し引きされて、固定資産の現在価値は増減することになります。投資の方が多ければ固定資産が増えていき、労働者1人当たりの利用できる生産手段が増え、生産性が向上していくということになりますね。
日本の製造業は、相対的に投資が多い状態が続いてきました、そうであれば固定資産の蓄積分も相当に大きいのではないかと想像できます。今回はそんな日本の固定資産を可視化していきましょう。
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バブル期に急増した固定資産、その後は……
日本の製造業の固定資産はどれくらい蓄積されているのでしょうか。まずは、推移を見ていきましょう。
上図は日本の製造業について、固定資産(青)と、労働者1人当たりの固定資産(赤)の推移を示したものです。固定資産の総額はバブル期(1985〜1990年)に急激に増大して、その後は横ばいになっていますね。
横ばいということは、投資によって増える価値と、減耗によって減る価値がちょうど釣り合うバランスで推移していることになります。250兆円程度の水準が続いた後、近年ではやや増加傾向に転じて、2021年では290兆円弱になっています。
一方で、製造業の労働者数は減少傾向が続いていますので、労働者1人当たりの水準は増加傾向にあります。ただし、労働者1人当たりの固定資産も、2009年からは横ばいになっています。前々回ご紹介した労働生産性も、同時期から同じ傾向を示していました。最近の数値では労働者1人当たりに約2700万円の固定資産が投じられていることになります。
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