“脱力”でロボットは剛柔自在? 人機一体が共同開発技術を一堂に:2023国際ロボット展(2/2 ページ)
人機一体は、「2023国際ロボット展」において、建設現場などでの重作業や危険作業を遠隔操縦のロボットによって代替する「人機プラットフォーム」で開発中の技術やシステムを披露した。
パワーウェイトレシオが油圧シリンダーと同等の電動シリンダー
「人機並進駆動ユニットver.5.0」は、油圧シリンダーに匹敵する高出力、高耐衝撃性を備えた電動シリンダーの試作機である。椿本チエイン、タダノと共同開発を進めており、油圧ショベルの油圧シリンダーの置き換えが可能なスペックの実現に向けた開発が進行中だ。人機並進駆動ユニットver.5.0は、1.5トンの定格推力を重量約14kgで実現しておりパワーウェイトレシオは15.5g/Wとなっている。これは既存の電動シリンダーと比べて82%の軽量化ができていることになり、油圧シリンダーと同等である。今後は3社で、さらなる性能向上や実用化に向けた検証作業などを進めていくことになる。
九州大学 ヒューマンセンタードロボティクス研究室 教授の田原健二氏と共同開発しているのが、減速比がゼロの状態を実現できる無段変速機構を備えた電動アクチュエーターユニット「人機エンタープライズドライブ(EPD)ver.1.2」である。直動の電動アクチュエーターを2台用いた駆動力伝達を摩擦に依存しない機構で、機械的な接続を保ったまま減速比を滑らかに変更することができ、出力軸が空転する減速比がゼロの状態を作り出せる。無段変速機というと自動車のトランスミッションのCVTが広く知られているが、減速比ゼロを実現するにはクラッチのような別機構が必要になる。「減速比ゼロというのは、力を加えても伝わらない“脱力”の状態だ。機械であるロボットは高出力を求められることが多いが、人の作業を代替するには“脱力”のような柔らかさも必要。人機EPDによって、緩急剛柔自在の次世代ロボットを開発できるようになる」(人機一体の説明員)としている。
人機一体は、立命館大学ロボティクス学科の教員を務めていた金岡克弥氏が2007年に創業したマンマシンシナジーエフェクタズ(MMSE)が母体となっており、2015年10月にMMSEから現在の人機一体に社名変更している。
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