公道走行可能な自律移動ロボット基盤や、力制御可能なモジュール型ロボットを出展:2023国際ロボット展(2/2 ページ)
パナソニック ホールディングスは「2023国際ロボット展」において、屋外走行可能な自律移動ロボット基盤や、力制御可能なモジュール型ロボット、多様な把持を可能とするロボットハンドなど、開発中のロボット技術群を参考出展した。
やわらかいものを抱きかかえる動きが可能なロボットアーム
ロボットの使用領域拡大のために開発を進めているのが、力制御可能なモジュール型ロボットアームだ。これはマッサージチェアにも搭載されている駆動部一体型の独自の「もみ力センサー」をロボットに応用したものだ。この技術を活用し、力覚センシング機能を組み込んだ低コスト関節モジュールを開発。これを組み合わせていくことで低コストで各関節に力覚センシング機能を持ったロボットアームを簡単に構築できる。
用途やタスクに応じて現状では3つまでモジュールを組み合わせてロボットアームを構築できる。全ての関節に力覚センシング機能があるために各関節で力制御を行い、やわらかいものを優しく抱きかかえるような動きや、腕の可動域を遮るようなものがあっても、外力を逃がしながら目的の作業を行うようなことが可能だ。「同等の力覚センシング機能を持つロボットアームよりもはるかに低価格で実現できることが特徴だ。従来は難しかった作業の代替などで手軽に使えるようにしていきたい」と戸島氏は述べている。
ワークをつかみながら持ち直すことができるロボットハンド
さらに、2022年の国際ロボット展でも出展した、柔軟物など多様な物体の把持が行えるロボットハンドも進化させて出展した。このロボットハンドは、2指のロボットハンド先端に循環型ベルト構造を採用し、つぶれやすいものでも優しくつかむことができるというものだ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同研究を行っている。ロボットハンドの大きさは全長255mm×全幅202mm×厚み110mmで、重量は2.0kg、最大開口幅は100mm、指先幅は20mmとなっている。可搬重量は1kgで、力制御範囲は0.2〜10Nだ。
ベルト式の巻き上げ構造を採用しつつ、指先の力覚センシングを行っているため、やわらかいものでも、優しく挟み、その後ベルトを巻き上げる形でしっかり把持することができる。さらに、今回のデモンストレーションでは、持っている向きをカメラで認識し、それに合わせて、ベルトを動かすことでハンドでワークを持ちながら回転させ、正しい向きにした後に、つかんだワークを置くような動きを示した。「通常はロボットで一度向きを整えてからつかんで箱詰めなどをするような動きが多いが、このハンドを使えば、持ちながら向きを直せるために、そうした作業が不要になる」と戸島氏は語る。
既に技術的にはある程度は確立されつつあり、今後はさらにどこまで安定してつかむことができるかを用途などに合わせて検証していく。さらに用途などに合わせてコストダウンなども進めていく計画だ。「まだすぐに市場投入できるというわけではなく、早くても2年後以降になるだろう。それできる限り縮めていきたい」(戸島氏)としている。
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