積水化学が情報科学×化学分析で挑むMI、AIで13種類の物性を同時に予測:マテリアルズインフォマティクス(1/2 ページ)
本稿では「ITmedia Virtual EXPO 2023秋」で、積水化学工業 R&Dセンター 情報科学推進センター長で京都工芸繊維大学 特任教授の日下康成氏が「社会変化の中でのマテリアルズインフォマティクス(MI)の導入と活用」をテーマに行った講演の内容を紹介する。
ITmedia Virtual EXPO 実行委員会が主催し、アイティメディア MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、BUILT、スマートジャパン、TechFactoryが企画したオンライン展示会「ITmedia Virtual EXPO 2023秋」がが2023年8月29日〜9月29日まで開催された。本稿では、同イベントの「素材EXPO」において、積水化学工業 R&Dセンター 情報科学推進センター長で京都工芸繊維大学 特任教授の日下康成氏が「社会変化の中でのマテリアルズインフォマティクス(MI)の導入と活用」と題して行った講演について紹介する。
マテリアルズインフォマティクスが注目されている背景
素材産業界では、使用される製品のライフサイクルが短くなっていることや新製品開発期間の短縮化に伴い、ハイスピードな新素材の開発が求められている。しかし、現状では多くの企業は従来の手法で新素材の開発を行っており、このニーズへの対応が課題となっている。
加えて、国内ではカーボンニュートラルへの対策が注目されていることもあり、環境配慮型の素材へのニーズが増大しているが、従来型の素材開発では対応が難しくなってきている。さらに、地政学的なリスクにより、資源を従来通り使えない可能性に直面している。銅、コバルト、ニッケルなどの金属やレアアースの調達が困難になると専門家は示唆しており、そのためこれまでとは異なる資源入手先の開拓や代替品の開発が重要性を増している。
このように現在は素材開発そのものにイノベーションが求められている。こうした環境の中で素材産業から関心が寄せられているのがマテリアルズインフォマティクスである。マテリアルズインフォマティクスは素材開発の実験データやシミュレーションにより生成された分子構造のデータなどを組み合わせ、新たな物性を有する素材の開発をデジタルの力で進める開発手法だ。
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