23年度上期の新車生産は3年連続で前年超え、コロナ禍前からは8.5%減:自動車メーカー生産動向(2/3 ページ)
長らく半導体不足などサプライチェーンの混乱で低迷していた自動車生産が着実に回復している。日系乗用車メーカー8社の2023年度上期の世界生産合計は、3年連続で前年実績を上回った。
トヨタ自動車
メーカー別に見ると、トヨタの2023年度上期のグローバル生産台数は前年同期比12.8%増の505万8248台と3年連続で増加した。年度上期の世界生産の過去最高を更新するとともに、半期としても初めて500万台を超えた。
けん引役は国内生産で、前年同期比31.5%増の169万2539台と2年ぶりに前年実績を上回った。半導体など部品供給が改善したことに加えて、国内市場の納期短縮を目的に、国内向けの部品供給を増やしたことも大幅増につながった。それでも「アルファード/ヴェルファイア」など人気の新型車は受注を停止している他、「ノア/ヴォクシー」など売れ筋モデルでも納期が6カ月以上となっており、依然として供給が追い付いていない状況は続いている。
海外生産も好調で、前年同期比5.2%増の336万5709台と3年連続のプラス。上期として過去最高となった。北米やアジアで需要が高まっている中で、前年に比べて半導体不足が緩和したことが台数増につながった。地域別では、主力の北米は前年の半導体不足による生産制限の反動により、同9.6%増と3年連続で増加した。一方、中国は、前年の上海のロックダウンの反動はあったものの、新たな排出ガス規制「国6b」への対応に伴い生産調整を実施した他、市場のEVシフトによる販売競争の激化などもあり、同7.3%減と2年ぶりのマイナスだ。
中国以外のアジアは、堅調な需要に加えて半導体など部品供給が改善したことで、インドの前年同期比2.8倍をはじめ、インドネシアが同7.1%増、フィリピンが同2.1%増、台湾が同15.1%増と伸びを見せ、アジアトータルでは同1.8%増と3年連続で前年実績を上回った。欧州は、需要は堅調に推移しているが、チェコでの部品工場の火災による稼働停止が響き、同0.3%減にとどまった。
9月単月のグローバル生産は、前年同月比1.5%増の90万919台と9カ月連続でプラスを確保し、9月として過去最高を更新した。このうち国内生産は、同12.8%増の31万920台と好調で、9カ月連続の前年超え。前年に比べて半導体不足の改善が進んだことが要因だ。
一方、海外生産は、前年同月比3.6%減の58万9999台と2カ月連続で前年実績を下回った。主要市場の北米は、部品供給不足の緩和により同5.0%増と6カ月連続で増加した。ただ、中国は競争激化による販売台数減少に合わせて生産も落としており、同6.7%減と5カ月連続のマイナスとなった。
中国以外のアジアも経済低迷により販売が減少しており、主力のタイが前年同月比12.1%減、インドネシアが同2.5%減、フィリピンが同24.1%減、マレーシアが同8.3%減、ベトナムが同36.2%減など、軒並みマイナスだった。唯一インドが旺盛な需要と工場の能力増強により同84.0%増と大幅に増加。それでも中国を含むアジアトータルでは同3.1%減と4カ月連続で減少した。欧州は半導体不足の影響は緩和しているものの、チェコが部品工場の火災に伴う稼働停止により同60.1%減と大幅に減少し、欧州全体でも同27.6%減と低迷した。
ホンダ
ホンダの2023年度上期のグローバル生産は、前年同期比6.4%増の197万6571台と4年ぶりに前年実績を上回った。このうち海外生産は、同5.5%増の165万8046台と5年ぶりのプラスだった。主力市場の北米は、新型車の好調など旺盛な受注に対して優先的に半導体を供給したこともあり、同33.0%増と大幅に増え、2年ぶりに前年実績を上回った。
ただ、中国は、市場のEVシフトによる競争激化などにより、前年同期比15.7%減と3年連続のマイナス。上海のロックダウンで低迷した前年同期を大きく下回る厳しい結果となった。中国の減産によりアジアトータルでも同11.9%減と5年連続のマイナスとなった。
国内生産は、前年同期比11.4%増の31万8525台と2年連続のプラスとなった。前年に比べて半導体不足の影響が緩和しプラスを確保したが、コロナ禍で大幅減産した2020年度上期との比較でも4.1%減という水準であり、依然として半導体が足りていない様子が伺える。
とはいえ、国内市場の需要動向を踏まえて部品調達を進めており、国内最量販車種の「N-BOX」はモデル末期ながら、2023年度上期の国内販売で前年同期比15.6%増と好調を維持し、車名別ランキングでも首位を守った。納期も短縮しており、N-BOXなど軽自動車は最大2カ月まで縮まった。受注を停止している「シビックタイプR」を除けば、「ZR-V」のHEVでの10カ月が最長となっている。
9月単月の世界生産は、前年同月比9.1%増の37万3703台と4カ月ぶりにプラスへ転じた。このうち国内生産は、同24.2%増の6万1515台と着実に回復しており、2カ月連続で増加した。海外生産も、同6.5%増の31万2188台と4カ月ぶりにプラスを確保。けん引したのが北米で、新型車の販売好調に加えて半導体の供給改善により、同13.2%増と2桁パーセント増で、9カ月連続のプラスだった。
一方、中国は厳しい販売競争が続いており、前年同月比2.5%減と4カ月連続で減少。ただ、前年9月が低水準だったこともあり、減少幅としてはここ数カ月で最も改善した。東南アジアなどの好調が中国の低迷をカバーし、アジアトータルでは同0.8%増と4カ月ぶりに前年実績を上回った。
日産自動車
日産自動車の2023年度上期のグローバル生産台数は、前年同期比2.8%増の166万2938台と3年連続で前年実績を上回った。要因は国内生産の大幅増で、同38.7%増の35万4428台と3年連続のプラスだった。半導体の供給改善に加えて、国内向けおよび輸出向け「エクストレイル/ローグ」、国内向け「セレナ」など新型車が貢献。その結果、輸出も同73.2%増と好調だった。ただ、半導体不足の影響は解消したわけではなく、コロナ禍前の2019年度上期との比較では9.2%減にとどまった。
海外生産は、前年同期比3.9%減の130万8510台と2年連続の前年割れ。地域別では、最大市場の中国が、市場のEVシフトやそれに伴う競争激化、さらに新型車「エクストレイル」が新たに搭載した直列3気筒1.5リットルターボエンジンの不評で販売が伸び悩んだことなどもあり、同33.9%減と3年連続のマイナスとなった。なお、この台数は小型商用車(LCV)を手掛ける東風汽車(DFAC)の株式売却に合わせ、LCVを除いて前年比を比較した日産独自の集計となる。日産の中国事業として前年実績にLCVを含んで比較すると同39.3%減となる。
一方、北米は新車販売の好調と半導体の供給改善により、米国が前年同期比15.1%増、メキシコも同62.1%増。英国も「キャシュカイ」の好調で同38.2%増と大幅プラスを確保した。
足元も傾向は変わらない。9月単月のグローバル生産は、前年同月比2.8%減の30万3157台と3カ月連続で前年実績を下回った。国内生産は回復基調が続いており、同21.2%増の6万6446台と17カ月連続のプラス。ただ、2019年9月との比較では9.2%減にとどまっている。車種ではエクストレイル/ローグ、セレナがけん引し、輸出も同39.0%増と伸長した。
海外生産は、前年同月比7.9%減の23万6711台と4カ月連続のマイナスだった。中国が依然として厳しく、同36.2%減と5カ月連続の減少。なお、前年実績にLCVを含んだ比較では同41.1%減となる。一方、北米はメキシコの好調で同24.5%増、英国も同45.0%増と、中国以外は好調に推移した。
なお、厳しい中国事業に対して日産は11月9日の決算会見で、2024年下期から2026年までに8車種の新エネルギー車(NEV)の投入と、中国から年間10万台規模の輸出を開始すると発表した。販売回復と輸出により中国工場の稼働率を維持する狙いだ。
スズキ
スズキの2023年度上期のグローバル生産台数は、前年同期比0.1%減の160万3275台と微減し、3年ぶりにマイナスとなった。これはパキスタンで2022年12月に導入された、外貨確保のための新たな輸入規制で部品の確保が困難となり生産停止を余儀なくされたことが影響した。なお、同社生産の6割超を占めるインドは、SUVの新型車を積極投入したこともあり、同0.1%増と3年連続で増加。年度上期として過去最高を更新した。それでもパキスタンの減産が響き、海外生産トータルでは同2.1%減の113万1120台と3年ぶりに減少した。国内生産は、同4.8%増の47万2155台と2年連続のプラス。半導体の供給改善が進んだことが奏功した。
9月単月のグローバル生産台数は、前年同月比0.7%減の29万4332台と3カ月ぶりのマイナスだった。半導体の供給改善などによりインドの前年同月が高水準だったことの反動が表れ、インドは同1.4%減と3月ぶりに減少した。インド以外の海外も同14.3%減と低迷し、海外生産トータルは同3.2%減の19万9324台と4カ月連続で前年実績を下回った。
一方、国内生産は半導体不足の解消による回復基調が続いており、前年同月比4.8%増の9万5008台と、7カ月連続のプラスとなった。輸出も同8.7%増と6カ月ぶりに増加へ転じた。
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