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なぜ営業と製造現場は対立してしまうのか? 原因と乗り越えるための方法間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(10)(1/2 ページ)

コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第10回は営業と製造現場の対立を乗り越える方法を解説する。

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 製造業がデジタルマーケティングを活用した新規営業活動を進める際、営業と製造現場との間に対立が生じることがしばしば見られる。このような対立の背後には、営業と製造現場の利害関係の不一致が要因として考えられる。特に、日常の業務における両部門間のコミュニケーションが不足している企業では、このような対立はさらに深刻な問題として顕在化する傾向がある。

 本記事では、営業と製造現場の間の対立がどのような原因で生じるのか、そしてその解決策は何かを解説し、さらにはこの問題を乗り越えて成功を収めた企業の事例を紹介する。

⇒連載「間違いだらけの製造業デジタルマーケティング」のバックナンバーはこちら

対立が起こる典型的な3つの原因

 営業と製造現場の対立はなぜ起こるのか。ここでは、3つの典型的なやりとりを取り上げ、その原因とそれが引き起こす問題について考察する。

納期と生産スケジュールの対立

営業 顧客からのオーダーが増えてきたので、来週中に5000個納品してほしい

現場 来週中は難しい。現在の生産スケジュールや機械のメンテナンスが入っているため、少なくとも2週間は必要だ

営業 それではお客さまに迷惑を掛けることになる。何とか早めに生産を調整してもらえないか?

 これは、営業と現場の間で生産スケジュールや機械のメンテナンス情報が共有されていないために起こる対立である。営業は顧客の要望に応えるための納期を提案しているが、現場はその納期に対して現実的な制約を抱えており、折り合いがつかなくなってしまっている。

 この対立が解消されず納期を守れない場合、顧客からの信頼を失い、再注文の機会を逸する可能性がある。

顧客の要求と品質管理の対立

営業 今回の新規の顧客は、製品の色合いや材質にとてもこだわりがあって、特定の仕様を要求してきている

現場 その仕様は現行の品質管理基準とは合致していない。特別な加工をする必要があるし、それには時間もかかる

営業 顧客はこの取引で今後の大きな注文も考えていると言っている。何とか対応してくれないか?

 営業が顧客の要求を受け入れる際、製造現場の制約や品質管理基準についての情報を十分に持っていなかった場合や、製造現場も営業の取引の背景や顧客の期待について十分に理解していない場合に対立が起こる。この対立により、納期の遅延や製品の品質問題が起こる可能性があり、結果として顧客との信頼関係の損失といった問題を引き起こすリスクがある。

販売価格とコストの対立

営業 競合他社との価格競争が激しくなってきている。次回の製品はもう少し価格を下げたい

現場 価格を下げるには、製造コストも同じように下げる必要がある。しかし、現在の材料費や労務費をこれ以上削減するのは難しい

営業 何とか工夫してコストを下げる方法はないのか? この価格では市場での競争力を保てない

 営業は市場の競争状況を重視し、製造現場は生産の現実を重視している。そのため、双方の優先順位や認識にずれが生じることで引き起こされる対立である。この対立が解消されず価格を下げることができない場合、市場での競争力が低下し、最終的には会社の売上やシェアの減少が生じるリスクがある。

 以上のように、営業と製造現場とのコミュニケーションや情報共有の不足、あるいは利害関係の不一致による対立は、顧客の信頼を損なうとともに、結果として自社の売上や利益の喪失につながるリスクになり得る。

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