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メタバースが急速普及する物流と建設業界、「2024年問題」などの問題解決にデジタルツイン×産業メタバースの衝撃(4)(5/6 ページ)

本連載では、「デジタルツイン×産業メタバースの衝撃」をタイトルとして、拙著の内容に触れながら、デジタルツインとの融合で実装が進む、産業分野におけるメタバースの構造変化を解説していく。

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自社のデジタルツインを汎用化、プラットフォームとして外販へ

 大林組は3D描写の強化、および従来の取り組みを全社統合する動きとして、ゲーム開発プラットフォーム「Unity」を提供するユニティ・テクノロジーズ・ジャパン、IT開発会社であるTISと連携して、「CONNECTIA」を具現化した。ゲームエンジンのUnityを活用して建設の施工管理の取り組みを行う。建設現場ではBIM/CIMデータや、センシングデータにもとづく点群、鉄筋情報、コンクリ―ト情報、設備/重機情報などさまざまな情報を統合管理する必要がある。従来は現場監督が図面を拡げて出来高・出来形管理を実施していたが、Unityを活用して3Dで視覚的に管理している。これにより、図面の解釈などの熟練度に拠らず、また、施主やゼネコン企業、サブコン企業、その他協力企業など幅広い主体間での合意形成や連携につなげられる。


図13:大林組のデジタルツインアプリ「CONNECTIA」(イメージ)[クリックして拡大] 出所:大林組

 大林組としては自社で構築したデジタルツインを、業界共通で活用するための“汎用デジタルツイン”にして業界全体へ拡げていくことを志向している。従来建設現場のデジタルツインを構築するには個別の調整(データ形式、位置の座標変換など)が必要であり、現場や業界を超えて拡がることの制約となっていた。取得情報を日本測地基準である「日本測地系2011」(JGD2011)に準拠した形で座標変換する他、データのやり取りを世界的な標準であるNGSI形式でAPI連携ができる形にしている。土木/建築や、規模の大小に関わらず活用が可能である他、3Dとともに時間軸の情報を追加し「4D情報」として活用できること、人や建機のリアルタイムセンシング情報も反映することができることなどが特徴だ。これらの技術とその完成度が高く評価され、2023年10月17日、アジア最大級の規模を誇るIT技術展のCEATECではグランプリを受賞している。

 今後社内とともに業界全体へ外販を行っていく上で、使いやすいツールにしていく技術的なサポートとともに、それらツールを使う上で前提となるオペレーションの改善などの組織的なDXの支援の体制を強化する。同社として施工管理に強みを持ったデジタルツインは少なく、グローバルでも競争力を持てると捉える。2023年度では社内でのβ版の活用をより深化させ、2024/2025年において事業の外部化の検討や、インテグレータ―との連携を含めて外部提供を本格化する方針だ。


図14:Unityを活用した施工管理デジタルツイン[クリックして拡大] 出所:大林組

熟練の技術無しでも高品質な業務ができる環境を

 土木においてBIM/CIMなど3Dデータと、GNSS(衛星測位システム)を活用して機器の自動制御/操作指示を行うマシンコントロール/マシンガイダンスの取り組みが進んでいる。これらの機能を持っている建機をICT建機と呼ばれ、従来は通常の建機よりも相当の価格となっていたが購入における政府の補助金の存在や、ICT建機でなくてもその機能を活用できる後付けセンサーにより活用が大きく進んでいる。

 従来建機の使用は熟練の技術/ノウハウが必要だったが、これら3D情報や制御技術の活用により誰もが高品質で業務ができるオペレーションが整備されつつあるのだ。また、ICT建機の施工データ・刃先の履歴データは工程によっては検査データとしても活用できる。座標データを持っており、地球上のどこを施工しているのかが情報として蓄積されるため、新たに検査データを取得する必要がなくなるからだ。


図15:ICT施工建機の構造[クリックして拡大] 出所:大林組

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