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誰もが3Dフードプリンタを使える世界に、パーソナルで新鮮な食体験創造を目指すスタートアップワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(9)(1/5 ページ)

本連載では、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。今回は3Dフードプリンタを用いて新たな食領域を開拓するByte Bitesさんを取材しました。

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MONOist編集部より

本連載はパブリカが運営するWebメディア「ものづくり新聞」に掲載された記事を、一部編集した上で転載するものです。

ものづくり新聞は全国の中小製造業で働く人に注目し、その魅力を発信する記事を制作しています。新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。


MONOist編集部注:今回は、ものづくり新聞編集部が2022年にByte Bitesを取材した記事と、その後、2023年に追加取材して作成した記事を合わせて構成しています。

 2022年7月、ものづくり新聞編集部は東京都新宿区にある新大久保を訪れました。向かったのはJR新大久保駅直結のビルにある施設、その名も「Kimchi, Durian, Cardamom,,,(キムチ,ドリアン,カルダモン,,,)」です。

 受付の「K,D,C」は「Kimchi, Durian, Cardamom」のアルファベットの頭文字です。よく見ると壁に掛けられた文字はゆらゆらと揺れており、これは躍動感を表現しているのだそうです。


「Kimchi, Durian, Cardamom」のエントランス[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞

 名前だけを見ると不思議な感じで、どんな場所だろうと思いましたが、施設の中に入ると、きれいで洗練された空間が広がっていました。「新しい食文化」と「食を通じた新しいライフスタイル」をテーマにした食の交流施設です。

 今回インタビューさせていただいたByte Bites(バイト バイツ)はこちらのコワーキングスペースに入居されています。コワーキングスペースの奥にはキッチンがあり、さまざまな調理機器が並んでいました。すぐ隣にキッチンがあるのは珍しい光景です。


奥にキッチンがあるコワーキングスペース[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞

 食に携わる人同士が交流できるコワーキングスペースの他、商品開発や商品加工を行うことができるファクトリーキッチン、自分の店舗を出店する前のテスト出店やポップアップショップの出店が可能なシェアダイニングなど、食に関わる設備や環境が整っています。

 「Kimchi, Durian, Cardamom,,,」という施設名は、各国の食文化の重要拠点である新大久保に古今東西から集まる無数の食材(文化)が、それぞれの個性をそのままに発揮し、混在するカオスや面白さを表現しているそうです。

 今回はこちらで、Byte Bitesの代表でデジタルフードデザイナーの若杉亮介(わかすぎ りょうすけ)さんにお話を伺いました。Byte Bitesはデジタルデータを基に食品を出力する機械「3Dフードプリンタ」を活用して食のパーソナライズ化や食感のデザインなど、これまでにない新たな食体験の実現を目指しています


Byte Bitesの若杉亮介さん 出所:ものづくり新聞

まだまだ未開拓な「食」×3Dフードプリンタ

――起業のきっかけを教えてください。

若杉さん 大学院を卒業後、起業をする前に教育関係の企業に就職しました。その会社はモノづくり教室を運営していて、そこで3Dプリンタを使った教育などを担当していました。

 その中で、例えば「3Dプリンタを子供の教育に活用する」などという領域や分野を横断して、3Dプリンタの可能性を考えることに興味を持ち、もっと3Dプリンタが生かせる分野はないかと考えるようになりました。学生時代から、いつか3Dプリンタを軸に仕事がしたいと思っていたこともあり、起業しました。

――「食」の分野に注目した理由をお聞かせください。

若杉さん モノづくりや製造業におけるいろいろな分野でデジタル化が進んでいますが、「食」は他の領域に比べてまだデジタル化が進んでいないと感じていました。大学院生の頃に、3Dフードプリンタで食感をデザインするという今の事業につながるような研究をしていたこともあり、これから開拓しがいがある「食」の領域の中で3Dフードプリンタをもっと活躍させることができるのではないかと思いました。

――3Dフードプリンタとはどのようなものか教えてください。

若杉さん 基本的な機能は、プラスチック樹脂素材などを使う一般的な3Dプリンタとそう変わりはありません。材料はある程度水分があって少し粘性があるものが適していますが、どんな素材が材料に適しているのかは未知数なところも多くあります。この機械を使ってどんなことができるのか、素材や製法の研究を自社で行っています。


3Dフードプリンタ。この機種は正方形に近い形で、電子レンジより大きめの家電という印象を受けました[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞
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