三菱電機がサブ6対応の透明アンテナを開発、電波の放射効率は従来比で2.3倍:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
三菱電機は5Gのサブ6に対応する透明アンテナを開発したと発表した。窓ガラスに設置する場合には非接触給電が可能なため、外観を損なう非透明な給電ケーブルが不要になるとともに、電子レンジ扉部の電波シールドに用いられるパンチングメタルと置き換えれば庫内視認性の向上も可能だという。
三菱電機は2023年10月24日、移動体通信技術の5Gにおいて6GHz以下の周波数帯を用いるサブ6に対応する透明アンテナを開発したと発表した。同アンテナを窓ガラスに設置する場合には非接触給電が可能なため、外観を損なう非透明な給電ケーブルが不要になるとともに、電子レンジ扉部の電波シールドに用いられるパンチングメタルと置き換えれば庫内視認性の向上も可能だという。2022年度末までに基礎技術の開発は完了しており、今後3〜4年をかけて実用化に取り組んでいく方針である。
タッチパネルなどに用いられる透明導電材料は、大型化対応のためにさらなる低抵抗化が求められており、ITO(酸化インジウムスズ)に替わって太さ数μmの金属メッシュをベースとするメタルメッシュの採用が進みつつある。抵抗の影響を受けやすい高周波でも使用可能なレベルになっていることもあり、透明アンテナへの応用にも注目が集まっている。それでも、通常の金属アンテナよりも抵抗が高いため、透明アンテナを実現するにはアンテナ形状に工夫が必要だった。
三菱電機の情報技術総合研究所は、メタルメッシュの一種である東レの「RAYBRID」を用いて、同社が測位や観測、通信、レーダーなどに展開してきたアンテナ技術を応用して今回の透明アンテナを開発した。
これまでにも透明アンテナを開発している企業は幾つかあるが、三菱電機の透明アンテナは、5Gの高速通信をけん引するサブ6やWi-Fiで用いられている2.4G/5G/6GHzなどの周波数帯への対応を強く意識して開発した点が大きく異なる。
新たに開発した透明アンテナの主な実装先は、スマートフォンやタブレット端末、ウェアラブル端末などに搭載される液晶ディスプレイの他、窓ガラス、電子レンジの3つを挙げる。
まず、液晶ディスプレイへの実装では、透明アンテナで液晶ディスプレイ全体を覆うアンテナ方式を採用することで、透明アンテナと金属フレームの間隙に発生する電界を放射源としている。従来の液晶ディスプレイ内に設置するタイプの透明アンテナで課題になっていた、絶縁体材料である液晶の影響で発生していた損失電流を低減できる。また、透明アンテナの面積が広がることで透明導電材料による損失も低減できるのでアンテナ性能の向上にもつなげられる。実際に、従来方式と比べて電波の放射効率は2.3倍に向上したという。液晶ディスプレイ全体を覆うため視認性の低下も気になるが、可視光の透過率は84〜90%ということで高い視認性を確保できている。
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