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これから先、日本が変化を遂げるには?3D設計の未来(2)(1/2 ページ)

機械設計に携わるようになってから30年超、3D CADとの付き合いも20年以上になる筆者が、毎回さまざまな切り口で「3D設計の未来」に関する話題をコラム形式で発信する。第2回のテーマは「これから先の変化に向けた日本の課題」についてだ。

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 前回はこれまでの約20年間を振り返ってみましたが、“これから先の変化”を想像してみると、世界的にはこれまで以上のスピードでさらに変化し続けていくだろうと筆者は考えます。

 前回「国内製造業では2Dによる設計が根強く残っている」と説明しましたが、ここには欧米や中国、新興国との違いが見受けられます。日本が本当に変化を遂げていくには課題があります。今回は、筆者の経験からその課題についてのお話をさせていただきます。

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1.業務改善と設計開発環境の構築

 今から約20年前に、「これからは3D CADでなければ仕事をとれなくなる」という言葉を聞いたことがきっかけとなり、3D推進を使命とする筆者の活動がスタートしました。

 この言葉は“既に3D CADによる設計を行っていた先進的な企業”のトップの方との会話から刺激を受けたある経営者が、自社の従業員に発したものです。おそらく、単に先進企業のトップに刺激を受けたからというわけではなく、経営者として日々感じている問題意識や将来こうありたいという姿があってこその発言だったのでしょう。そのことを、筆者はその後の3D CAD推進活動の中で感じ取ることができました。

問題意識

 必要かつ重要なことは、経営者が設計開発環境だけではなく、「会社やその現場に対して、問題意識をどこまで持つことができるのか」です。装置製造メーカーを例に、設計開発の現場や、そこを取り巻く環境での問題を考えてみます。

設計開発環境の問題
図1 設計開発環境の問題[クリックで拡大]

 図1のように、設計開発環境を取り巻く問題を考える際、「内部環境/内部要因」と「外部環境/外部要因」について意識する必要があります。

  • 内部環境/内部要因
    • 社内でコントロールできる
    • 企業の中で起こっている変化
    • 例:社内教育の実施、特許取得
  • 外部環境/外部要因
    • 社内でコントロールできない
    • 企業の外で起こっている変化
    • 例:バブル経済、リーマンショック

 ご存じの通り、企業が存続していくために最も重要なのは利益を生み出すことです。マネジメントの父であるドラッカーの名言に「企業の目的は顧客の創造である」というものがあります。企業は顧客の創造を行い、顧客に価値を提供し、顧客満足を獲得し続けていくことで、利益を生み、存続していきます。装置製造業界も全く同じです。

 顧客に価値の提供を行い続けていくには、変化する外部要因と内部要因から、企業のあるべき姿と現状を比べることでギャップを見いだし、「問題は何か? 問題解決を行うための課題は何か?」を明確にして、その解決のための施策を打つことが必要かつ重要です。あくまでも事の始まりは問題意識です。

業務改善とIT

 経営者は常に問題意識を持っています。そして、その問題意識を具体化して解決を図ることが重要です。決して、事の始まりがツールではないということです。

 経営者が持つ企業のありたい姿と、外部要因と内部要因から来るありたい姿とのギャップを埋めるには、業務改善を行う車輪と、業務改善を行うための支援ツールとしてITを活用するという車輪の両輪を回していく必要があります。

 しかし、実際のところ、筆者の印象では、

  1. 社内で問題意識が共有されていない
  2. 経営者の思いを理解し、業務改善とIT活用が行える社員とスキルの欠如
  3. 社内で連携して進められない
  4. ツールありきの理論
  5. IT活用の正しい知識と実践の欠如

といった課題があるように感じています。

業務改善とIT活用によって設計開発環境は改善される
図2 業務改善とIT活用によって設計開発環境は改善される[クリックで拡大]

 3D CADの普及率が低く、その活用成果が得られていない企業の話をよく聞くことがあります。ツールを導入したが効果が得られない……というのは、業務改善の目的がないということです。もっといえば、問題の本質を見つけることもなく、ただ単にツール導入に頼っただけです。それでは仕事のやり方を変えることはできません。

 世の中で、DX(デジタルトランスフォーメーション)が騒がれていますが、DXも単にデジタルツールを使うことが目的ではなく、例えば、ある業務を改善するという目的/目標を達成するために、その手段としてデジタルツールを使うという考え方になります。「これからは3D CADでなければ仕事をとれなくなる」という意味を再考する必要があります。

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