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騒音低減技術を説明する前に騒音計の使い方をおさらいするCAEと計測技術を使った振動・騒音対策(16)(2/3 ページ)

“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第16回では、騒音低減技術について触れる前に、騒音計の使い方についておさらいする。

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[Time Const]ボタン:時定数切り替え

 騒音計の応答を「Fastモード」と「Slowモード」に切り替えるボタンです。アナログ時代の音響機器の騒音計を使うと説明しやすくなります。指示針が動くやつです。昔の騒音計ではこのメカ的に動く指示針がデシベル値を指し示していました。衝撃音を測定する際、指示針はその大きさの変化に追従できず騒音レベルの瞬時最大値を表示できませんでした。この挙動はFastモードに近いと考えられます。FastモードとSlowモードの規格を表1に示します。

モード 現在の規格 旧規格
Fast 時定数125[ms]のローパスフィルター
(耳の時間応答に近似)
1000[Hz]0.2[s]の正弦波入力による最大指示値は、同振幅の定常正弦波入力の指示値に対して−1+0.5/−1[dB]の範囲内
Slow 時定数1[s]のローパスフィルター
(平均レベルの測定)
1000[Hz]0.5[s]の正弦波入力による最大指示値は、同振幅の定常正弦波入力の指示値に対して−4±2[dB]の範囲内
表1  FastモードとSlowモードの規格

 表1の右側に記載した旧規格を見た方が分かりやすいですね。衝撃音に対する指示針の追従遅れを1[dB]と決めたようです。0.2[s]の正弦波入力なので、0.1[s]の衝撃音ならもっと追従しなくなります。

 Slowモードは平均値を見るためのものです。アナログ時代に8時間分の等価騒音レベルを測定することは大変なことだったので、Slowモードが使われていました。

 プレス機の打ち抜き音をFastモードとSlowモードで測定した際の騒音計の指示値は、図3右図のようなイメージになると思います。

FastモードとSlowモードの比較
図3 FastモードとSlowモードの比較[クリックで拡大]

[Start/Stop]ボタン:等価騒音レベル測定

 等価騒音レベル測定の開始と終了を指示するボタンです。

[Cal]ボタン:校正信号出力

 騒音計の内部のブロック線図を図4に示します。この図を使って校正信号を説明します。

騒音計内部のブロック線図
図4 騒音計内部のブロック線図[クリックで拡大]

 ここで図1をあらためてご覧ください。2つの電圧信号出力端子を記載しておきました。1つ目の電圧信号出力端子は「AC出力」と呼ばれています。図4のようにレベル調整と周波数補正した音圧信号が出力されます。図3左図のような信号となります。この信号をFFTアナライザに入力すると、音の周波数分析ができます。また、オシロスコープにつなげると音圧の真なるピーク値を測定できます。労働者の聴力障害は等価騒音レベルではなく、このピーク値の音圧に暴露される回数によって決まるかもしれません。本当に労働者の耳を守りたいのならば等価騒音レベルではなく、瞬間的な音圧のピーク値を低くする努力が必要です。音圧信号はその後検波されて実効値となり、動特性回路つまり「ローバスフィルター」を通過し、対数演算器でデシベル値となって表示されます。対数演算器の出力も電圧信号として「DC出力」として出力されます。図3右図のような信号となります。

 デジタル機器となった騒音計は、レベル調整ないしは周波数補正以降の音圧信号はA/D変換されてコンピュータに取り込まれ、それ以降はコンピュータによって計算されていると推測しております。

 [Cal]ボタン(校正信号出力)の用途を説明します。音圧信号を周波数分析するときに1[V]の電圧値は何デシベル、ないしは何パスカルかを知る必要があります。[Cal]ボタンを押すと、94[dB]に相当する信号がAC出力とDC出力に出力されます。これを使ってFFTアナライザやオシロスコープの校正を行います。というわけで[Cal]ボタンはとても重要なボタンとなります。94[dB]は約1[Pa]です。

 以前、騒音計を購入する際に「校正器」も買っておくとよいと述べました。校正器は94[dB]の実際の音を出すので、校正器の穴に騒音計のマイクをカチャンとはめ込んでAC出力とDC出力の電圧値を読めば、[Cal]ボタンを使わなくても校正ができます。騒音計が壊れてないかチェックするのに使います。

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