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日本版データ共有圏「ウラノス・エコシステム」とは? 欧州データ包囲網への対抗軸製造業×IoT キーマンインタビュー(2/4 ページ)

世界中で「GAIA-X」や「Catena-X」などのデータ連携の枠組み作りが進む中、日本にはどのような取り組みが求められるのだろうか。2023年4月に正式に命名された日本版データ共有圏「ウラノス・エコシステム」の概要と狙いについて解説する。

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 ここからは、和泉氏のインタビューを通じて、ウラノス・エコシステム発足の経緯やそこに込められた思い、今後の方向性について紹介する。

ウラノス・エコシステムはどのようにして生まれたのか

MONOist どういうことを考えてウラノス・エコシステムを設立する経緯となったのですか。

和泉氏 ウラノス・エコシステムの前に、そもそものところからお話ししたいと思います。DXレポートを作成した時も感じていましたが、経済政策を進める中で、政府や省庁の中だけで作るようなやり方は難しいと感じていました。特にグローバル競争が深刻化する中、変化のスピードが速いデジタル政策については、従来型では難しいと分かっていました。そこで、より切実に実際に課題の向き合っている企業の所管団体に協力してもらい、こうした企業と一緒に考えて方向性を作るという形へと転換を図りました。より切実に問題に向き合っている企業の課題感に寄り添い、そこで生まれた戦略に対し、政策支援や予算をつけるという順番に切り替えたわけです。

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経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 アーキテクチャ戦略企画室長の和泉憲明氏

 経済政策の理想としているのが、アウトバーンです。アウトバーンはドイツの高速道路ですが、速度無制限区間があることが特徴です。作った直後は事故が多発し保険会社が経営危機に陥るほどだったといいます。保守的に考えればここで法律を変えて規制をかけるという考え方になると思いますが、ドイツ政府は基本的にはアウトバーンやそれに関する法制度を維持し、時速130kmでの走行を推奨するなど運用面だけを変えて、問題を抑制する手法を取りました。結果的にこうしたインフラが何を育てたかというとドイツの自動車産業です。アウトバーンがある土壌が、速度が出て頑丈でよく走るクルマを生み出し、それが世界で認められているという現状があります。経済政策としてはこのように、他にないインフラ環境を作り、そしてそれが新たな産業を生むということが理想だと考えています。

 ただし、それが誰も使わないインフラでは意味がありません。そこで、実際に具体的な問題を想定し、そこに関わる企業や業界団体とともに議論をして枠組みを作っていくことが必要となります。企業や業界内の努力で実現できることは政府が踏み込む必要はありません。しかし、業界を横断するもので、多くの企業が困っており、個々でそれを解決するには膨大な手間やコストが必要になるものについては、協調領域として政府が支援して環境を整備し、産業界がより早く固有の競争領域での活動に集中できるようにすることが重要だと考えています。

 こうした政策立案の転換の中で、変化の大きな自動車産業について、日本自動車工業会や自動車技術会などと議論を重ねる中で、直近の課題として欧州で義務化が進められようとしている「バッテリーパスポート」の問題があるということが出てきました。

 バッテリーパスポートは、材料調達からリサイクルまで、蓄電池のライフサイクルに関わる情報を記録し取引企業間で共有できるようにしようとしたもので、欧州バッテリー規則案でも実装が義務付けられています。こうしたデータ共有の仕組みというものは、バッテリーメーカーにとっては競争領域ではありません。そこで、こうした情報共有のための日本版のデータスペースというものが必要だということになり、他で進められていたデータ連携の仕組みなどを組み合わせて生まれたのがウラノス・エコシステムとなります。

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