“組み込みUNIX”を目指した「ChorusOS」は企業買収の波に飲まれて消えた:リアルタイムOS列伝(39)(3/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第39回は、“組み込みUNIX”を目指したものの企業買収の波に消えた「ChorusOS」を取り上げる。
Sunのリストラでオープンソース化も複数の買収でネットの波に消える
さてこのあたりまでChorus Systemesは単独でビジネスを行っていたのだが、1997年に同社はSunに買収され、同社のEmbedded Systems Software business groupを構成することになる。また、この時点でChorus/MiXはChorusOSに名前を変更している。買収時点でSunは同社の「Solaris」は汎用向け、ChorusOSは通信業界向けと位置付けていた。
ところが3年後の2000年、Sunは大規模なリストラを余儀なくされ、Embedded Systems Software business groupへの新規投資を中止した。この時点でChorusOSはのバージョンはVersion 5.0まで上がっており、Sunによってオープンソースの形で公開された(インターネットアーカイブに記録されたWebサイト)。過去形なのは、その後SunがOracleに買収されるなどして、もはやダウンロード不能になっているためである。
Zimmerman氏は買収後もそのままSunに残ったが、Gien氏は2002年にJalunaという新しい会社を興し、ここでLinuxベースのソリューション提供およびChorusOS(ChorusOS 5.0)のサポートを行った。先もちょっと書いたが、通信業界向けにChorusOSが採用されている以上、長期的なサポートはどうしても必須である。Jalunaの創業に当たってはSunからも資金が出ていたようで、要するにChorusOSのサポートをJalunaにブン投げた格好だ。
JalunaはまずChorusOS 5を「Jaluna-1」という名称でリリースし、次いでこれをベースに「Jaluna-2/RT」という新バージョンを開発している。またJalunaはその後VirtualLogixという会社名に変更され、Jaluna-1/2とは別に「VLX Hypervisor」と呼ばれるハイパーバイザーを32/64ビットCPUやDSP向けに提供するビジネスをメインに据えたが、同社は2010年にRed Bend Softwareという同業他社に買収されている。ただそのRed Bend Softwareも2015年にHarman International Industriesに買収され、そのHarman International Industriesも2017年にSamsungに買収されている。さすがにここまで買収が繰り返されると、もはやVirtualLogixというかJalunaのリソースはインターネット上にまるで残っていない。
一応、Jaluna-1がまだSource Forgeから入手できる他(図3)、Sunを買収したOracleのWebサイトにChorusOS 5.0のドキュメントが残っているが、どこまで役に立つのかはよく分からない。企業買収が重なると、その波に飲まれていつの間にか消えていた製品は少なくないが、ChorusOSもそうしたものの一つであった。
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