工場のレイアウト案の評価はそのまま生産効率に直結する:現場改善を定量化する分析手法とは(4)(2/3 ページ)
工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第4回は、SLP法における「レイアウト案の比較評価」「完成したレイアウト計画の実行」について説明する。
1.3 その他の評価項目
レイアウトの評価は、基本的にはレイアウト設計をサポートすることが第一の目的です。そのサポー卜には3つの方法があります。1つ目の方法では、レイアウト設計の要求事項の定量化を図ります。2つ目の方法では、要求事項の充足度を明らかにすることで、問題点を見極めます。そして3つ目の方法では、過去の診断結果から対策した内容を調べて、類似の対策案を利用します。
表2は、レイアウト素案の評価方法を主として説明しましたので、評価項目は5項目のみに限定しましたが、以下によく使われる評価項目について説明します。
(1)流れ率
対象レイアウトにおける部品または製品の流れを調査し、レイアウト図に記入していきます。各工程の流れの逆行回数をカウントして、調査対象全体の工程数との割合で評価します。
<評価算出式>逆行回数÷全体の工窪数×100(%)
(2)近接性
対象レイアウトにおける代表的な製造品の数点を選び出して、主要品の工程の近接度を調査します。主要部の工程のうち、隣接している工程の割合で評価します。隣接工程数は、全体の工程数から“飛び越し工程数”を減算することでも求められます。
<評価算出式>隣接工程数÷全体の工程数×100(%)
(3)空間利用率
レイアウト設計の対象とする建屋の高さ方向の利用度を調査し、その結果をレイアウト図に記入します。例えばクレーンが設置してある場合はクレーンから下の高さを建屋の高さとします。
<評価算出式>製品を含めた設備の平均高さ÷建屋の高さ×100(%)
(4)面積利用率
生産面積に対するその利用率を調査してレイアウト図に記入します。生産面積には、建屋内のユーテイリティー、事務所、工具室、部品倉庫などは含めません。また、作業面積は、実質の作業域面積のことをいい、部品や製品の停滞/仕掛かり面積、遊休設備面積、低稼働設備面積、不良品置場面積などの価値を生み出していない面積は除きます。
<評価算出式>作業(設備)面積÷生産面積×100(%)
(5)同期性
レイアウト設計の対象範囲で生産する主要部品5品くらいの工程間の仕掛かり工程数の比率を計算します。主要部品の全体工程数と異常仕掛かり品の発生工程数を調査して記入します。異常仕掛かり工程とは、各工程の場所などに滞留している場合に、標準仕掛かり量または標準の搬送ロットの3倍以上のケースをいいます。
<評価算出式>異常仕掛かり工程数÷全体の工程数×100(%)
(6)レイアウト変更(リレイアウト)の容易性
配置替えの容易性のことをいいます。レイアウト後の配置替えが可能な設備台数を調査して、調査対象全体の設備台数との割合で評価します。レイアウト変更の容易性を高める方法として、供給電源の天井配線、ピットのない設備配置、無人配送車のようなルート変更が容易なマテハン装置を用いるなどの方法が挙げられます。
<評価算出式>配置替えが可能な設備台数÷全体の設備台数×100(%)
(7)管理分散度
レイアウト設計の対象職場で、マテハンや仕事の性質により職場が離れているショップ数(工程数)で評価します。
<評価算出式>分散ショップ数÷全体のショップ数×100(%)
(8)歩行者比率
レイアウト設計の対象職場内の歩行者の割合で評価します。歩行者とは、打ち合わせ、マテハン、バイトなどの工具交換、部品探し、工具の借用/返却、用便など、公用/私用、直接員/間接員を問わず、歩行している人は全て対象とします。原則として作業領域から離れた場合も歩行者として扱います。
簡便的な調査方法としては、診断者は対象職場の中央または見通しのよい地点で見渡せる人員をカウントし、6分間(1dhr.)のうちに歩行した人員をカウントし記録する方法が用いられます。
<評価算出式>歩行人員÷全体の人員×100(%)
(9)職場の展示性
該当領域の幹線通路の直線性で評価します。碁盤の目のような幹線路は全て直線とします。途中で曲っている場合の曲がり箇所数を調査します。また、途中で通行止めになっている場合は曲線とします。
<評価算出式>通路の曲線箇所数
2.レイアウト案の修正と調整
レイアウト案の評価結果に基づき、採択された素案をさらに実行案へと修正と調整などを行って、最終版のレイアウト図を完成させていきます。
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