ボールねじを使った1軸リニアアクチュエーターの性能向上:CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(15)(4/6 ページ)
“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第15回では、ボールねじを使った1軸リニアアクチュエーターの性能向上について考える。
弾性変形を考慮した1軸アクチュエーターのゲインと応答の関係
1軸アクチュエーターのいろいろな部品が弾性変形した状態を図14に示します。ボールナットは上向きの推力を発生するので、その反力はボールねじとアンギュラベアリングに作用します。ボールナットとアンギュラベアリング内のボールは変形し、ボールねじも細ければ縮みと同時にねじり変形が生じます。ステージの重心が推力の作用線上にないときは、ステージに発生する慣性力がモーメント荷重となりLMガイド内のボールも弾性変形します。
図14を見ると、エンコーダーはモーターのお尻に付いているので、エンコーダーから先は弾性変形するものと慣性力が発生する質量となります。この状態をフィードバック系で表現すると図15になります。
では、OpenModelicaを使って挙動をシミュレートしましょう。図16に位置の時間変化を示します。ゲインG1は0.35[-]です。
発振しました。このとき、図16の位置がばねから先の質量の位置ではなく、ロータリーエンコーダーの回転角であることに注目してください。ばねの伸縮による振動ではなく、フィードバック系が振動しています。仕方がありません。ゲインを下げましょう。これを図17に示します。
黄色の線はゲインを0.05[-]まで下げたものです。まだ振動成分が残っていますが、このあたりが妥協点のようです。位置決めに要する時間は100[s]くらいとなりました。
次に、ばね定数を上げてシミュレートします。ばね定数を上げてゲインを調整した結果を図18に示します。
ばね定数を10倍とすると、ゲインを4倍にできました。位置決めに要する時間は20[s]くらいです。以上の考察から次のことがいえます。
- 位置決め時間を短縮するにはフィードバック系のゲインを上げる
- ゲインを上げ過ぎるとフィードバック系が発振するので、ゲイン増加と時間短縮には限界がある
- メカの剛性(ばね定数)を上げると、ゲイン増加の限界を上げることができる
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