世界各地で拡大する医療分野のNFT利用、国内医療機器メーカーも対応を迫られる:海外医療技術トレンド(99)(2/3 ページ)
本連載第75回で、医療DXの変革ツールとしてブロックチェーン/分散台帳技術を取り上げたが、今回は、医療分野におけるNFT(非代替性トークン)利用について取り上げる。
ヘルスデータ利活用を支えるデジタルIDとしてのNFTへの期待
他方、医療情報交換に欠かせないアイデンティティー管理に関連して、中国・北京大学のヤン・チュアン氏らの研究チームは、2023年3月15日、Computers in Biology and Medicine誌において、「ブロックチェーン技術を利用した医療情報交換向け非代替性患者トークン化により強化された自己主権型アイデンティティー」(関連情報)と題する論文を発表した。この論文は以下のような構成となっている。
- 1.イントロダクション
- 2.関連研究
- 3.方法
- 3.1 環境設定
- 3.2 システム設計
- 3.2.1 生成モジュール
- 3.2.2 リンケージモジュール
- 3.2.3 認証モジュール
- 3.2.4 交換モジュール
- 4.ケーススタディーと結果
- 5.考察と結論
本研究では、(1)NFT生成のための生成モジュール、(2)ローカルの患者のアカウントをNFTにリンク付けするためのリンケージモジュール、(3)患者が医療提供者に対してトークンへのアクセスを許可することを可能にする認証モジュール、(4)医療情報交換(HIE)プロセスおよびSSI経由でトークンの正当性を検証するプロセスに関与する交換モジュールの4つを含むブロックチェーンアーキテクチャを開発し、このアーキテクチャ上でケーススタディーを実施している。
このアーキテクチャでは、以下の通り、ブロックチェーンにおける3つのタイプのノードを定義している。
- フルノード:最新状態のブロックチェーンを保存し、トランザクションを検証/送信して、ブロックに保存されたトランザクションを追跡することにより、ブロックチェーン全体の履歴を取得できる
- アーカイブノード:ブロックチェーンの生成からのデータ全体を保存する
- ライトノード:トランザクションを検証/送信して、ハードウェア仕様に関する要求事項を低減するために、ブロックの情報の一部のみを保存する
本研究では、SSIで実現するNFTベースの患者トークン化のためのアーキテクチャ設計/実装およびケーススタディーを実施した結果、NFTを利用したセキュアで透明性がある、患者中心のアイデンティティー管理や医療情報交換の実現可能性や潜在力が示されたと結論づけている。
医療コミュニティーにおけるDAOの役割とは
なお、NFTに関連して注目を浴びているものに、分散型自律組織(DAO)がある。医療分野におけるDAO適用に関連して、ポルトガル・アレンテージョ科学技術パーク(PACT)のサラ・マテウス氏らの研究チームは、2023年1月2日、California Management Review誌において、「分散型自律組織(DAO)は医療に革命を起こせるか?」(関連情報)と題する記事を発表している。
表3は、医療領域におけるDAOの例を挙げたものである。
表3 医療領域におけるDAOの例[クリックで拡大] 出所:Sara Mateus et. Al.「Can Decentralized Autonomous Organizations (DAOs) Revolutionize Healthcare?」(2023年1月2日)を基にヘルスケアクラウド研究会作成
本記事では、医療領域におけるDAOの機会として、以下のような点を挙げている。
- アクセス可能で透明性のあるガバナンス
- スマートコントラクトにより統治される医療および保険会社は、透明性と信頼性を提供する
- 健康記録の民主化により、個々人が自分のデータの所有権を有する
- コミュニティーに、経営意思決定に関する投票を認めて、収益を生み出すプロセスについて周知する
- 資金調達と投資
- 小規模企業が、関連する製品・サービスを開発する機会を得られるようにする
- 医療産業のパフォーマンスを向上させる
- コミュニティーに、資金調達を受けるプロジェクトの選択を認める
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