まるで光電センサーのような手軽さ、コグネックスが深層学習活用のセンサー発売:製造現場向けAI技術
Cognex(コグネックス)は2023年9月12日にエッジラーニングセンサー「In-Sight SnAPP」(インサイトスナップ)を発売した。
Cognex(コグネックス)は2023年9月7日、東京本社(東京都文京区)で記者会見を開き、同月12日に発売するエッジラーニングセンサー「In-Sight SnAPP」(インサイトスナップ)の概要を説明した。
手軽な深層学習活用で画像センサーの裾野拡大
FAにおいてセンサーは、ワークがある地点を通過したことや、排出されて何もなくなったことなど製造装置が次の動作を始めるための“状態”の検知や、ワークが治具から外れていたり、適合しないワークが供給されたりした時に“異常”を知らせるためなどに用いられている。
その中で画像センサーは、接触センサーや光電センサーなどと違い、カメラで観測することでワーク全体を点や局所ではなく面で捉えることができるのが特徴だ。最近は画像センサーの画像処理能力が向上しており、幅広い分野で画像センサーの活用が進んでいる。
近年増えている変種変量生産においても、ワークを面で捉えることができる画像センサーはカメラの視野に収まれば検査できるため、品種変更の際にも物理的な変更が必要ない。各種通信プロトコルを備え、上位からの生産指示にも対応可能だ。
コグネックスでは2022年4月にディープラーニング(深層学習)機能を搭載した画像センサー「In-Sight 2800」を発売した。そこで同社が打ち出したのが、“エッジラーニング”という概念だ。あらかじめ同社が持つデータベースを使ってある程度の学習を済ませたニューラルネットワークを提供することで、現場では取り付けてからわずか数枚の学習でパラメーターも設定せずに運用を開始できる。人間の視覚に近い認識力を持っている上、ディープラーニングやプログラミングの専門知識が不要で、「In-Sight 2800」は自動車をはじめ幅広い産業向けに2023年8月末までに1万4000台を出荷した。
今回、新たに発売する「In-Sight SnAPP」は、「In-Sight 2800」も含めて従来画像センサーに盛り込まれていたルールベースの機能を外すことで、ルールベースの画像センサーとほぼ同価格帯での販売を実現、より幅広い分野での採用を図る。製品名は英語の「Snap」に由来しており、簡単に使える製品という意味を込められている。
コグネックス In-Sight製品 フィールドプロダクトマーケティング シニアマネジャーの磯部龍樹氏は「ディープラーニングで、これまでルールベースで解決してきた課題をより簡単に解決できるようになった。さまざまなルールベースのツールを組み合わせて判定していたものが、ディープラーニング1つで済むようになった。それならルールベースのツールは必要ないのではないか、となった」と話す。
機能としては「2‐Class Classifier(2種分類)」と「Anomaly Detector(異常検知)」の2ツールがまず利用可能だ。2種分類では、対象が学習したAとB(良品と不良品)のどちらに似ているかという分け方をする。どちらか判断がつかない場合は「Unclassified(未分類)」に分類する。異常検知では不良品にだけある画像の特徴を異常の特徴として学習し、対象の画像から異常が検出されると不良品、検出されなければ良品と判断する。今後も新たな機能を追加していく。
いずれも良品と不良品の画像を数枚学習させるだけで運用をスタートできる。「もっと気軽に、簡単に導入していただけるようにしようと、In-Sight SnAPPでは光電センサーと同じ感覚で使える画像センサーを目指した」(磯部氏)
「In-Sight SnAPP」を同社のWebHMIディスプレイパネル「VisionView Web」をイーサネットでつなぐと、「In-Sight SnAPP」の設定ができるようになっており、1つのモニターに対して最大4台まで接続可能だ。
「In-Sight SnAPPは簡単に設定して使うことができるので、専門的な知識がない方でも安心して使っていただきたい」(コグネックス シニアディレクターの網本憲氏)
狭い隙間にも収まるショートレンジタイプと、近接設置が難しい場所向けのロングレンジタイプの2種類があり、照明は白または赤が選択可能だ。機能は2種分類のみと異常検知のみ、両方が使用できる3タイプがあり、合計12種類のラインアップとなっている。価格は約30万円台からとなっており、In-Sight 2800以上の販売を目指すとしている。
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