5Gで17台のAMRを駆動し搬送負荷30%削減、量子アニーリングも駆使するNEC掛川工場:スマート工場最前線(4/4 ページ)
NECプラットフォームズは2023年8月から掛川事業所に建設した新工場の本格稼働を開始した。本稿では、先進技術を採用した同工場のモノづくりについて紹介する。
セキュア生産の徹底とクリーン度の強化
新A棟では先進技術の活用に加え、「セキュア生産」の適用を徹底して行っている。セキュア生産とは、セキュリティの確保された製品を提供するとともに製品に関する秘密情報をサプライチェーン全体で保護するため、独自のセキュリティ基準でセキュアな調達、セキュアな製造、セキュアなロジスティクスを行うことだ。
業務に応じて入退出可能な区画を設定し、ICカードと顔認証を組み合わせた入退出システムで人の出入りを厳格に管理している他、生産ネットワークの細分化(セグメンテーション)とUTM(総合脅威管理)機能などを搭載したセキュリティ機器の導入を行い、サイバーセキュリティリスクの低減を図っている。フィジカル空間とサイバー空間の両面から安全と安心確保に取り組んでいる。
また、品質向上を図るためにクリーン度も高めた。各フロアの入り口にAGVからの搬送物を高速エアーにより除塵(じょじん)するエアシャワー付きバスボックスを設置している他、上層階へ搬送するバーチレーターをフロア内に導入。これにより、室内の浮遊微粒子であるホコリや浮遊微生物の発生を抑えている。製造フロアのクリーン度はネットワーク関連機器の製造フロアとしては高いレベルであるクラス7相当の運用としている。
NECプラットフォームズでは、これらのさまざまな取り組みを進めることで、国内の生産能力強化と人手不足などの外部環境に負けないスマートファクトリーの構築を推進していく。今後について石塚氏は「自動化が全て正しいというわけではないが、人手不足が今後もさらに厳しくなることを考えると、できるところは全て自動化していきたいと考えている。そのためにさまざまな検証を今進めているところだ」と語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ローカル5Gでロボットを遠隔操作、人の遠隔作業支援も実現――NEC甲府工場
NECとNECプラットフォームズは、NECプラットフォームズ甲府事業所において、ローカル5Gを活用したピッキングロボットの遠隔操作と遠隔作業支援の有効性が確認できたと発表した。今後、実用化に向け2021年度は価値検証を進め、2022年度中に本格導入を目指す。 - サービスのグローバルマザー工場へ、生産撤退後に生きた日本の現場力
2002年にパーソナルコンピュータの開発生産事業から撤退し、NEC製のPCやマザーボードの保守サービスサポート事業に転換したNECパーソナルコンピュータ群馬事業所。同事業所はNECおよびLenovo製品のサポートサービスの戦略拠点として存在感を高め、グローバルマザー工場としての役割を担おうとしている。 - NECは、どうやって「在庫が山積みなのに売り場は欠品」状態から脱却したのか
「なぜこんなに在庫が残っているのに欠品が起こるのか」。NECでは1990年代まで、需給ギャップに円滑に対応できず、サプライチェーンの各所で在庫の山が発生していた。その状況から脱却できたのは2000年から取り組みを本格化させた生産革新の成果だ。その革新の最前線でもあるNECインフロンティア東北を訪ねた。 - スマート工場化は次段階へ、AI活用の定着とアプリケーション拡大に期待
スマート工場化の動きは着実に広がっている。その中で2022年はAIを活用した「アプリケーションの拡大」をポイントにデータ活用のさまざまな形が広がる見込みだ。 - スマート工場は“分断”が課題、カギは「データ取得」を前提としたツールの充実
工場のスマート化への取り組みは2020年も広がりを見せているが、成果を生み出せているところはまだまだ少ない状況だ。その中で、先行企業と停滞企業の“分断”が進んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対応なども含めて2021年もスマート工場化への取り組みは加速する見込みだが、この“分断”を解消するような動きが広がる見込みだ。 - スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。