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製造業でデータ共有圏が広がる背景と、データ共有のインパクト加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(2)(4/5 ページ)

本連載では「加速するデータ共有圏(Data space):Catena-XやManufacturing-Xなどの最新動向と日本への産業へのインパクト」をテーマとして、データ共有圏の動向やインパクトを解説していく。今回はデータを共有することのインパクトを紹介する。

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(1)攻めの観点:新規事業やデジタルサービスの創出

  • ユースケース例:新規事業やデジタルサービス創出
    • 製造as a service(製造需要と能力の最適マッチング)
    • データを用いた課金サービス/as a service検討(データ従量課金、製品利用課金、成果報酬型)
    • エンドユーザー利用データを活用したデジタルサービス検討やプロダクト
    • 異業種と連携した新規領域サービス(MaaS、スマートシティーなど)

 まず製造業のビジネスモデルやオペレーションではデータ活用が重要となっている。「攻め」の観点ではデータを活用したソリューションビジネスやプラットフォームビジネスが広がってきていることなど、データが競争力の源泉となっていることは周知の事実だ。


図:データを軸としたプラットフォームビジネス[クリックで拡大] 出所:拙著「日本型プラットフォームビジネス」

 自社の既存の領域を超えた展開が求められるようになってきている。トヨタ自動車によるWoven Cityの展開のように、MaaSやスマートシティー、産業メタバース、ソリューションビジネスなど領域の垣根を超えたデータ活用がますます求められている。

 より競争力のあるソリューションを展開していく上では自社のみのデータでは限界があり、異業種や顧客/エンドユーザー、時には競合他社などとのデータ連携も欠かせなくなってくる。こうしたデジタルデータを活用したソリューション展開においても、データ共有を通じてデータの範囲を広げて競争力を構築していくことが求められる。


図:企業や領域を超えた連携の必要性[クリックで拡大] 出所:筆者

(2)オペレーションの高度化

  • ユースケース例:オペレーションの高度化
    • サプライヤーと連携した製品設計、開発
    • サプライチェーン全体の生産や供給計画の迅速シミュレーション
    • サプライチェーン横断での品質管理、随時アラート
    • マスカスタマイゼーション、モジュール製造

 続いて、サプライチェーンに含まれる企業との設計や生産などでの密接な連携を通じてオペレーションの効率性や品質を向上させる「オペレーションの高度化」である。今までインダストリー4.0など製造業のデジタル化の文脈で議論されてきた方向性を、よりコネクター型のデータ共有圏(Data space)を通じて加速化させる動きである。

 例えば顧客ニーズにもとづいて高効率にカスタマイズ製造を行うマスカスタマイゼーションにおいては、需要情報をサプライヤーにも伝達し、迅速にニーズに合わせた供給対応をしてもらう必要がある。サプライヤーとも密接にデータ連携することがマスカスタマイゼーションの実現につながる。


図:製造業のエンジニアリングチェーンと、データ共有による高度化[クリックで拡大] 出所:筆者

(3)規制対応やサプライチェーン有事対応の守りの観点

 加えて、「守り」の観点でもデータ連携が重要となる。サプライチェーンにおけるCO2のモニタリングを行うScope3への対応に加えて、各種災害や半導体不足、ウクライナ危機などのサプライチェーンが分断するリスクや、サプライチェーンの人権や環境のSDGsの観点でのリスクにいかに迅速に対応するかが求められる。

 さらに規制の観点では欧州電池規制も施行され、EV(電気自動車)向けバッテリーに関してライフサイクルの各段階でのCO2総排出量を検証し、独立した第三者検証機関による証明書などの提出が義務化される。ルール形成の観点ではバッテリーに限らず幅広い領域でデータ共有がNice to haveではなく、Must haveへと変化してきているのだ。


図:データ共有の背景となるサプライチェーン論点[クリックで拡大] 出所:筆者

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