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「地産地消電源」を作る! つくばのベテラン技術者がチャレンジする夢スタートアップシティーつくばの可能性(3)(2/3 ページ)

筑波研究学園都市としての歴史を背景に持つ茨城県つくば市のスタートアップシティーとしての可能性を探る本連載。第3回は、電力問題の解決に貢献する可能性を秘めたアンビエント発電技術に取り組むスタートアップ・GCEインスティチュートへのインタビューを通して、スタートアップエコシステムが果たす役割についても考える。

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住みやすい研究学園都市から生まれるスタートアップ

 後藤氏につくばでGCEを創業した理由を尋ねたところ「単純な理由としては、私がつくば近隣に住んでいるからですね。最初に就職した会社が、私が30歳くらいの頃につくばに研究所をつくりました。それをきっかけに関西から転勤してきて、それ以来ずっと住んでいます」という答えが返ってきた。

 つくば市の研究学園都市としての歴史は長い。1973年に筑波大学が開学し、1980年までに43の国立研究機関などがつくばへの移転が完了した。その後も民間企業も含めて多数の研究機関が集積し、研究学園都市が構築されている。東京都心とのアクセスもよく、市内で働く研究者は2万人を超える。

 つくば市の魅力の一つは、自然の豊かさと利便性を兼ね備えた「住みやすさ」だ。後藤氏のように、仕事の都合でつくばに住み始め、気が付けばずっと住み続けているという研究者は少なくない。長く住んで活動していれば、研究者どうしのネットワークも生まれやすいだろう。“住みやすい街”であるつくばから、研究開発型のスタートアップが生まれ、世界に羽ばたいていく。そんなストーリーがもっと描かれてほしいというのは、つくば市民としての筆者の願いでもある。

老舗のインキュベーション施設「TCI」

 とはいえ、住みやすい街というだけでは起業家の増加にはつながらない。スタートアップの成長を助けるさまざまな環境が必要不可欠だ。後藤氏は「つくばに拠点を置いている一番の理由は、このオフィスが身近にあったからです」と説明する。

インタビューに応じる後藤氏
インタビューに応じる後藤氏[クリックで拡大]

 GCEが入居しているオフィスとは、30年にわたってスタートアップ支援を行っているインキュベーション施設「つくば研究支援センター」のことだ。通称をTCI(Tsukuba Center Inc.の略)という。つくばエクスプレスのつくば駅からクルマで10分弱、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と産総研(産業技術総合研究所)に隣接し、大きな総合公園にもほど近い。

 TCIには、筑波大学や研究機関から生まれたスタートアップだけでなく、スタートアップ支援を行う企業や、司法書士、税理士事務所など、約120の企業/団体が入居する。創業支援やビジネスマッチングのサポートも積極的に行われており、ディープテック領域に強いVC(ベンチャーキャピタル)とも提携するなど、つくばエリアのスタートアップエコシステムの一翼を担っている。

「実は、TCIに入居するのは3回目です。以前にも2度、スタートアップ企業の経営に携わっていたのですが、2度ともTCIでお世話になりました。いろいろな企業の人がここで働いていますから、刺激も受けるし、仲良くなることもある。特にスタートアップにとっては、オープンな環境があり、気軽な交流のできる場があることは大切です」(後藤氏)

 どんな場所にオフィスを構えるのかは、企業にとって重要な問題だ。一般的なオフィスビルを借りたり、登記もできるコワーキングスペースを利用したりと手段はさまざまだが、インキュベーション施設への入居はスタートアップにとって魅力的だろう。会議室やOA機器などオフィス設備に掛かるコストを抑えられるといったハード面でのメリットはもちろんのこと、ビジネスの相談ができるスタッフが常駐していたり、ネットワーキングイベントに参加しやすかったりといったソフト面でのメリットは大きい。

「それに加えて、当社は研究開発のスタートアップなので、実験設備を置くためのラボが必要になります。大量の水を使えたり、排水や排気、換気のための設備が十分にあったりという条件もあるので、駅前のシェアオフィスに入るというわけにはいきません。ラボが借りられて、周囲とのコミュニケーションも期待できる、TCIのようなインキュベーション施設は貴重です」(後藤氏)

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