検索
インタビュー

モデルベース開発でマイクログリッドをコスト削減、中堅中小製造業の脱炭素に向け組み込み開発 インタビュー(2/4 ページ)

中堅自動車部品サプライヤーである武蔵精密工業は、モデルベース開発によってコスト削減を可能にしたマイクログリッドを自社で構築した。国内の中堅中小製造業が悩みを抱えるカーボンニュートラルへの対応に向けて外販も検討している。

Share
Tweet
LINE
Hatena

本社工場にマイクログリッドを構築、非常時は地域の防災施設に電力を供給

 武蔵精密工業がマイクログリッドに取り組む背景には、自社のカーボンニュートラル達成だけでなく、国内製造業が工場などを展開する地域のCO2排出量削減にも貢献できることがある。同社 研究開発部 スマートパワーシステム開発Grの鋤柄智久氏は「再エネ電力を企業と地域で融通する『地域マイクログリッド』によってエネルギーの地産地消ができれば、企業だけでなくその地域全体のカーボンニュートラル実現にも貢献できるはずだ。中堅中小の国内製造業がカーボンニュートラルを目指す上で、有力な選択肢になると考えている」と述べる。実際に、日本政府も「地域マイクログリッド構築事業」としてマイクログリッドの構築を支援しており、企業と自治体双方にとってカーボンニュートラルに向けた重要な選択肢になりつつある。

武蔵精密工業がマイクログリッドに取り組む理由
武蔵精密工業がマイクログリッドに取り組む理由[クリックで拡大] 出所:武蔵精密工業

 そこで武蔵精密工業は、本社工場(愛知県豊橋市)の一部建屋を活用してマイクログリッドの構築を進めているところだ。まずは第1段階として、平時は工場内に設置した太陽光発電パネルや蓄電池の活用による工場電力のピークシフトに利用しつつ、災害などで停電などが発生する非常時には地域の防災施設に電力を安定供給する発電所としての役割を果たすことを想定している。

武蔵精密工業が構築しているマイクログリッドの基本構想の第1段階
武蔵精密工業が構築しているマイクログリッドの基本構想の第1段階[クリックで拡大] 出所:武蔵精密工業

 開発を進めているマイクログリッドの構成は、出力250kWの太陽光発電パネル、工場の廃熱を活用できる25kWのコージェネレーション発電機、200kWh×3系列のリチウムイオン電池システム、リチウムイオンキャパシター、これらから得られる直流電力を工場設備向けの交流に変換する100kWのDC-AC変換器、工場外の電力系統に接続するための高圧受変電設備、マイクログリッド全体を集中/監視するEMS(エネルギーマネジメントシステム)などとなっている。

武蔵精密工業のマイクログリッドの構成
武蔵精密工業のマイクログリッドの構成[クリックで拡大] 出所:武蔵精密工業

 鋤柄氏は「マイクログリッドを構築する上で解決すべき最大の課題は、平時と非常時の目的を果たせる仕様を維持しながらシステム全体の導入コストをどのように抑えるか。そこで活用したのが、モーター部品などの開発で使い慣れたマスワークスのモデルベース開発環境である『MATLAB』と『Simulink』だ」と説明する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る