検索
ニュース

稲作の中干し期間延長でJ-クレジットを取得し環境配慮と農家の収益拡大を支援スマートアグリ(1/2 ページ)

ヤンマーマルシェとNTTコミュニケーションズは、稲作農家などの生産者の新たな収益源としてカーボンクレジットの1つであるJ-クレジットの創出に関する取り組みを開始すると発表した。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 ヤンマーマルシェとNTTコミュニケーションズは2023年8月2日、東京都内とオンラインで会見を開き、生産者の新たな収益源となるJ-クレジットの創出に関する取り組みを開始すると発表した。

水位などのデータ取得にIoTセンサー「MIHARAS」を活用

 J-クレジット運営委員会は2023年3月1日、「水稲栽培における中干し期間延長」の方法論を発表した。中干しは夏の暑い時期に田んぼの水を抜いて、土にヒビが入るまで乾かす作業を指し、中干し期間の延長は稲作で生じるメタンガスの削減につながるとされている。水稲栽培における中干し期間延長の方法論では、対象の水田で直近2年以上の実施日数の平均より中干し期間を7日以上延長することで、延長をしなかった場合に想定される温室効果ガス(GHG)排出量をJ-クレジットとして申請できることを認めている。


中干し期間中のほ場の様子[クリックで拡大] 出所:ヤンマーマルシェ

 これを受け、ヤンマーマルシェは契約する一部の生産者(以下、パートナー生産者)が栽培する多収/良食味米「にじのきらめき」を対象に、2023年秋から中干し期間の延長を提案し、J-クレジットの認証取得を推進する。併せて、中干し期間延長のエビデンスを得るために、水位などのデータを得られるNTTコミュニケーションズのIoT(モノのインターネット)センサー「MIHARAS(ミハラス)」を活用する。

 MIHARASにより、水田の地温、水位、水温、湿度、気温などのデータを取得する他、得られたデータはNTTコミュニケーションズが提供するアプリ「Green Natural Credit」に自動的に連携し、Green Natural CreditでJ-クレジットの申請までを一気通貫で完結するという。


農業IoTセンサー「MIHARAS」(左)とJ-クレジット発行申請アプリ「Green Natural Credit」[クリックで拡大] 出所:ヤンマーマルシェとNTTコミュニケーションズ

 これらの取り組みにより生成されたJ-クレジットの販売で農家の収益拡大を後押しする。加えて、中干し期間を延長すると、土壌条件などによっては米の収穫量が落ちる場合もあるが、ヤンマーマルシェが収穫量の確保および品質の向上に向けた営農支援を行う。収穫した米は、環境に配慮した食料を求める顧客ニーズの高まりを踏まえ、環境配慮米としての販売などでブランディングを行い、販売/流通をサポートする。


今回の取り組みの概要[クリックで拡大] 出所:ヤンマーマルシェとNTTコミュニケーションズ

 各社の役割に関して、ヤンマーマルシェは、フィールド提供、営農支援、米のブランディング、販売/流通支援を担当し、NTTコミュニケーションズは、IoTセンサーの提供、Green Natural Creditの提供、J-クレジットの販売先検討を担う。なお、今回の取り組みはJ-クレジット制度のプロジェクト登録と認証取得に申請する予定だ。

 今後は、今回の取り組みを全国へ展開し、2030年度までに約1万トン(t)のCO2排出量削減を目指す。さらに、得られたJ-クレジットを全国に広く流通させることで農業由来のカーボンクレジットを活用した新たな農業モデルの構築を行い、同時に地域活性化などの社会課題の解決を実現していく。

 併せて、MIHARASなどのIoTセンサーで取得した情報を活用し、生産者への営農支援も強化する。さらに、今回の取り組みで収穫した米はNTTドコモが運営する通販Webサイト「dショッピング」での販売も検討している。

 ヤンマーマルシェ フードソリューション部 部長の菊池満氏は「現在、ヤンマーマルシェが米の生産から販売までを支援しているパートナー生産者は190者だ。パートナー生産者が栽培している多収/良食味米については、業務用の実需者の要望数量を踏まえて、パートナー生産者と事前契約し、全量を購入している。価格についても実需者と交渉の上、生産のコストをベースに種まき前(前年秋〜当年初)に決定している」と語った。


ヤンマーマルシェが行う営農支援、米のブランド化、流通の取り組み[クリックで拡大] 出所:ヤンマーマルシェとNTTコミュニケーションズ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る