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構造相転移の発現を機械学習により予測、大規模スクリーニングが可能に:研究開発の最前線
早稲田大学は、MLの1種となるPositive-Unlabeled学習を活用し、構造相転移を起こす分子を効率的に抽出する手法を開発した。構造相転移の発現を事前に予測することで、材料分野、製薬分野での活用が期待できる。
早稲田大学は2023年7月10日、ML(機械学習)の1種となるPositive-Unlabeled学習を活用し、構造相転移を起こす分子を効率的に抽出する手法を開発したと発表した。
構造相転移とは、温度や圧力などの外部刺激により、物質が固体状態を維持したまま結晶構造が変化する現象を指す。これを事前に予測することで、構造相転移により機能が発現する蓄熱材や強誘電材、アクチュエーター材料などの材料分野、製薬分野での活用が期待できる。
今回の研究では、文献やケンブリッジ結晶構造データベース(CSD)から取得したデータを基に、構造相転移の発現可能性を予測する機械学習モデルを構築。同モデルを用いて約18万個の分子データから抽出した113個の分子を検証したところ、約8%にあたる9個の分子で構造相転移の発現を確認できた。これは、CSDに含まれる相転移の報告率約0.3%を上回る成果で、従来法では困難だった構造相転移の大規模スクリーニングが可能になった。
また、分子構造と転移温度に関係性があることを解明。結晶構造の情報がない場合でも、回帰モデルを使って分子構造から転移温度を予測できるため、望んだ温度で構造相転移する材料を開発できる可能性も示唆される。今後は、結晶構造を考慮したMLを開発することで、精度の向上を目指すとしている。
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