業務効率化の道具箱(14)続・便利なツールと裏腹の「地雷」を踏まないために:山浦恒央の“くみこみ”な話(167)(1/3 ページ)
ソフトウェア開発にとどまらない、PCを使う全ての人が対象となるシリーズ「業務効率化の道具箱」。第14回は、前回に続き、ツールの導入/運用時にありがちな「地雷」をケーススタディー形式で紹介する。
1.はじめに
本シリーズでは、日頃の作業を効率化し、定時で帰宅する方法を紹介しています。主な業務効率化の例は、下記の通りです(詳しくは第154回を参照)。
- スペックの高い機器を導入する
- 使用機器を使いこなす
- ツールを導入する
- 自分でツールを作る
- 働き方を工夫する
今回も前回に引き続き、「ツールを導入する」「自分でツールを作る」をテーマにして、ツール導入の「地雷」に関するケーススタディーを取り上げます。
2.ツール導入のメリット
業務効率化の有力な方法の1つがツール導入です。世の中にはさまざまなツールがあり、自分の業務に合致するツールを使うと業務効率化が期待できます。特に、人力作業には効果が大きく、作業時間の短縮やミスの軽減が期待できるでしょう。
選択肢は外部ツールだけではありません。外部ツールで自社の業務とフィットしない場合は、「自分でツールを作る」「外注にツールを作ってもらう」という選択肢もあるでしょう。この場合は、世界で最も自社に合うツールが作成できるメリットがあります。
3.コロナ時代に起こった日本のツール導入事例
近年、日本で、というよりもはや世界的なレベルでのツール導入の成功事例となったのが、コロナ禍でのリモート会議ツールでしょう。
2020年頃、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行しました。当時のニュースはコロナ関連で持ち切りとなり、さまざまな場所でクラスターが発生し始めました。そのころの流行ワードとして出てきた「3密」という言葉に代表されるように、なるべく人と接触しないように努力する必要がありましたね。
3密を避けるために活用したツールが、ZoomやTeamsなどのWeb会議ツールです。従来、会議は会議室などに集まってワイワイやるものでした。しかし、3密を避けようとすると会議室に人を集められません。コロナ禍では、社内の会議でもリモート会議ツールを使用しました。Web会議が進んだことによって、いつでもどこでも会議に参加できるため、業務が効率的になりました。
会議ツールの最大の功績は、IT系を毛嫌いして避けていたり、うとかったりしていた人たちが、否応無しに「IT化」されたことですね。皆さんの周囲にもいると思いますが、IT化やネットワーク化の潮流に絶対に乗らない人がいます。こうなると宗教上の理由で拒絶しているとしか思えませんが、そんな人も、自宅からのリモートワークでは会議ツールを使わざるを得ず、自宅でWi-Fiを装備し、ネットワーク環境を作ってアプリケーションを使えるようになりました。これは画期的なことで、世の中のIT化が強制的に20年進歩したといわれています。
大学でも同様の現象が起きました。コロナ禍では、生徒は大学のキャンパスに入れず、教室に集まれません。代わりに、Web会議ツールを使用して授業をリモートで実施するようになりました。学生の中には、PCが得意でない人も多く、Web会議ツールの導入には不安もありました。しかし、1年も経てばみんな慣れてしまい、現在は、「リモートの方が楽だった」と思っているはずです。
大学の中には、ひたすらIT化を嫌悪する教授陣が意外に多くいます。さすがに筆者が関係している情報処理系、通信系には存在しませんが、文科系の先生の中には、講義ノートの内容を黒板に書いて授業をするスタイルが多かったことを考えると、いきなり「会議ツールで授業をせよ」といわれて面食らったでしょう。パワーポイントの使い方を覚え、自宅にネットワーク環境を構築し、会議ツールを使えるようになるには、大きな苦痛と作業があったに違いありません。大学内のIT化も一挙に(そして、強制的に)20年進化したように思います。
話は少し逸れますが、「強制的なIT化」は公営ギャンブルでも顕著だったそうです。競馬、競艇、競輪は、無観客状態でレースを開催し、場内に入れない客はWebサイト経由でレースを観戦し、馬券、舟券、車券もネットワーク経由で購入することになります。券の購入から払い戻しまで、全てコンピュータで管理できたため、運営コストの大幅な削減や、自動的に払戻金に課税できる環境が整い、公営ギャンブル界の悲願であったデジタル化が一挙に進みました。
これらの例のように、ツールを導入することで、業務の効率化が進み、作業形態が一変するメリットがあります。ただし、源氏物語の研究が専門の国文学の教授がITを使いこなすのが大変だったように、導入/運用の際にはさまざまな問題が存在します。今回は、前回に引き続き、ツール導入に発生する問題点をケーススタディー形式でまとめます。
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