“人間らしさ”をテーマに課題解決に取り組むデザイン会社「きいちのメモ」設立:デザインの力(1/2 ページ)
デザイン起業家の守屋輝一氏は“人間らしさ”をテーマに社会課題を解決するデザイン会社「株式会社きいちのメモ」を設立した。デザイナーとしての具現化能力を生かした社会課題解決型プロジェクトの企画、開発、事業化などに取り組む。
デザイン起業家の守屋輝一氏は2023年7月3日、“人間らしさ”をテーマに社会課題を解決するデザイン会社「株式会社きいちのメモ」(以下、きいちのメモ)を設立したことを発表した。デザイナーとしての具現化能力を生かした社会課題解決型プロジェクトの企画、開発、事業化などに取り組む。
社名の「きいちのメモ」は、守屋氏が6歳のころから書き記し続けてきた人間観察記録のメモに由来する。その記録は文字数にして1億文字を超えるもので、同氏の現在の活動を支えるアイデアの源泉にもなっているという。
同社は企業理念に「人の『弱さ』を前提にした仕組みづくり」を掲げ、人間がつい行ってしまうような非合理的な行動や自然に湧き上がる感情を大切にし、それらとうまく折り合いをつけ、弱さを初めから組み込んだ仕組みをいかにして実現するかを探求していくとしている。
どこでも遊び場に変えるプレイキット「PORTABLE PARK」
会社設立に伴う第1弾事業として、どこでも遊び場に変えるプレイキット「PORTABLE PARK(ポータブルパーク)」を発表した。
PORTABLE PARKは、紙の印刷加工会社である福永紙工の協力の下に実現した紙製の子ども向け遊具で、自在に動かしたり、形状を変えたり、複数のPORTABLE PARKを連結したりして遊ぶことができる。自由な動きや伸縮は同社独自のペーパーハニカム構造によって、連結や固定は面ファスナーによって実現しており、「自分の力で遊びを生み出し続ける行為を誘発できる」(守屋氏)のが特長だ。
また、PORTABLE PARKは紙でできているため、ケガなどの危険性が極めて低く、「危ないから○○は禁止」「○○してはいけません」といった子どもたちの発想力や遊びの幅を阻害するような制約も少ない。ちなみに、ハニカム構造部の端面は手作業でヤスリがけし、手を切ったりしないよう滑らかに仕上げられているという。
PORTABLE PARKには、三角型、四角型、円型の3つの形状バリエーションがあり、畳んだ状態(厚さ約1.5cm)から最大300cmまで拡張可能なLサイズ、同じく畳んだ状態(厚さ約1cm)から最大180cmまで拡張可能なMサイズを用意する。畳んだ状態であれば子どもの手でも十分に持てるサイズだが、大きく伸ばす(拡張する)と1人では持ち切れないほどの大きさになる。実はこれも狙いの1つであり、自然と周囲の子どもや大人たちを巻き込んで、協力して遊ぶようになるのだという。「“うまく扱えない遊びの余白”をあえて残すことで、人と協力し合うことの大切さを学んだり、想像力を育んだりできる」(守屋氏)。
PORTABLE PARKは遊具でありながら収納、持ち運び、片付けが容易である点も特長だ。従来の遊具の場合、大きなものだと移動や設置スペースなどの制約があり、逆に小さなものだと持ち運びは楽になる半面、遊びの幅が小さくなってしまうといった課題があった。これに対し、PORTABLE PARKは紙製なので重量もそれほどなく、小さく折り畳んで収納や持ち運びができ、限られた空間でもその広さに応じた動きのある遊びを実現できる。また、大きく広げたり、連結させたりしたPORTABLE PARKを元の状態に戻す行為も遊びのような感覚で楽しみながら行えるため、子どもたちが能動的に片付けに取り組むようになる。
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