スマートホームの標準「Matter」普及に向けアマゾンが提供するAlexaの3つの機能:製造業IoT(1/2 ページ)
Amazon Alexaインターナショナルがスマートホームの標準規格「Matter」への対応状況などについて説明。同社が展開するEchoデバイスの基盤「Amazon Alexa」に、Matter準拠デバイスとの連携を簡素化する3つの機能を導入したという。
Amazon Alexaインターナショナルは2023年7月4日、東京都内で会見を開き、スマートホームの標準規格「Matter」への対応状況などについて説明した。同社が展開するスマートスピーカー「Amazon Echo」をはじめとするEchoデバイスの基盤「Amazon Alexa(以下、Alexa)」に、Matterに準拠したデバイスとの連携を簡素化する3つの機能を導入し、日本国内で拡大が進まないスマートホーム市場の起爆剤としたい考え。会見と同日にスマートリモコンの新モデル「Nature Remo nano」の販売をAmazon.co.jpで開始したNatureも登壇し、Matterがスマートホームに与えるインパクトを説明した。
Amazon Alexaインターナショナル ジャパンカントリーマネージャーのティニス・スキパース氏は「2014年のAmazon Echoの発売時点では、Alexaに対応する言語は1つだけ、対応デバイスもAmazon Echoだけだった。2023年の現在、対応言語は17に増え、対応デバイスは14万以上と大きく広がっている。2025年にはコネクテッドデバイスの数は750億に達し、その時点でも北米が最大市場だが、アジア太平洋も20%を占めるようになっているだろう。現時点で日本市場は3人に1人がスマートホームを利用しており、今後も大きく拡大していく余地がある」と語る。
現在のEchoデバイスは、必要ないときには環境に溶け込む「Ambient Intelligence」という考え方を基にした機能の開発に注力している。「この場合、センサーをトリガーにしてスマートホームの機能が動かすことになるが、そこで重要な役割を果たすのがスマートホームの標準規格であるMatterだ」(スキパース氏)という。
スマートホーム機器の標準規格の本命と目されるMatter
Matterは、スマートホーム機器の安全性と信頼性を担保するとともに、IoT(モノのインターネット)機器としての利便性を阻害しないシームレスな利用を実現するためにCSA(Connectivity Standards Alliance)が策定を進めている標準規格である。アマゾン(Amazon.com)はCSAの幹事企業に当たるプロモーター(Promoter)として参画しており、Matterの策定に大きく関わっている。また、アマゾンだけでなくグーグル(Google)やアップル(Apple)もCSAのプロモーターを務めていることから、スマートホーム機器の標準規格の本命と目されているのだ。
Matterは2022年10月に、規格のバージョン1.0に当たる「Matter 1.0」がリリースされており、EchoデバイスのMatterへの対応も順次進められている。Amazon Alexaインターナショナル 技術本部本部長の福与直也氏は「Alexaでは、Matter対応のWi-Fi、Threadで接続される電球、プラグ、スイッチ、センサーのセットアップと操作が可能だ」と説明する。2022年冬にWi-FiとAndroid、2023年春にThreadとiOSというように段階的に対応を広げてきたが、2023年夏からハブ製品も対応する予定になっている。
Matterへの対応に向けて、Alexaの追加された機能は「Matter Simple Setup(MSS)」「コミッショナブルエンドポイント」「Ambient Home Dev Kit」の3つだ。
1つ目のMSSは、これまでEchoデバイスで利用可能だった、デバイスをネットワークに参加させる手順を簡略にする拡張機能の「Frustration Free Setup(FFS)」をMatterに広げたものだ。位置付けとしては、FFSのソリューションの一つという扱いになっている。MSSを利用すれば、Amazon.co.jpなどアマゾンのECサイトから購入したMatter対応デバイスについて、バーコードの読み込みやパスコードの手入力の手間を省いてスマートホームに用いているWi-FiとThreadのネットワークに加えることが可能になる。
FFSでは、アマゾンのECサイトから購入したアマゾン製品をユーザーの自宅のWi-Fiネットワーク設定する際にオプトインして登録すると、Wi-FiのSSIDやパスワードを暗号化してクラウドに記録する「Amazon Wi-Fiロッカー」という仕組みがある。MSSは、この仕組みをMatterデバイスにも広げることで、Echoデバイスにとどまらない形でユーザーがスマートホーム機器を利用しやすくする狙いがある。
2つ目のコミッショナブルエンドポイントは、Alexaの拡張機能であるAlexaスキルによるMatterデバイスの制御をローカルで直接行えるようにするための機能だ。EchoデバイスとMatterデバイスを連携しているだけでは、AlexaスキルでMatterデバイスを制御しようとしてもクラウド経由で行うことになってしまう。コミッショナブルエンドポイントによって、Echoデバイスを起点としてMatterデバイスをMatterネットワークにつなげることで初めて、Echoデバイスがクラウドを経由せずにMatterデバイスをローカルで制御できるようになる。
3つ目のAmbient Home Dev Kitは、Alexaとサードパーティーアプリ間での情報共有が可能になるAPIをはじめAlexaのさまざまな機能を拡張するAPIのセットになる。EchoデバイスやAlexaとの連携を想定したMatterデバイスのアプリケーションを開発するための開発環境となっている。
なお、MSSとコミッショナブルエンドポイントは提供済みで、Ambient Home Dev Kitは2023年内に提供する予定である。
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