新生パナソニックを襲った“四重苦”、それでも長期的な目線で投資を拡大:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
パナソニックグループで家電や空調設備、電材などの事業を展開する新生パナソニック。同社 CEOの品田正弘氏が報道陣による合同取材に応じ、事業の足元の状況や今後の方向性について説明した。
「新販売スキーム」と「欠品ゼロの実需連動SCMの構築」
投資と同様に「長期的な目線での事業運営」で改革を進めているのが国内家電事業である。パナソニックの国内家電事業では現在、商品価値に基づく適正価格販売に向けた「新販売スキーム」と「欠品ゼロの実需連動SCMの構築」の導入を進めている。
品田氏は新販売スキームについて「インバウンド需要などもあるが、今後日本人の需要が減っていっても生産性を高く事業を持続させていくにはどうすればいいかを考えた上での施策だ。既に大きなタッチポイントが顧客との間にあってつながりも深く、そういった意味では恵まれたビジネスともいえる。新販売スキームは2022年度時点で、国内家電の売上高の2割弱くらいまで広がってきており、販売店にも『粗利が増えた』『在庫負担がない』などのメリットを実感してもらっており受け入れられつつある。今後は売上高の3割くらいの比率を目安に導入を進めていく」と説明する。
新販売スキームは、品田氏が旧アプライアンス社のトップを務めていた2019年から導入に向けた取り組みが始まった。「これから日本の家電需要が縮退していくときにどうすべきか、家電販売店がオーバーストア状態にあり世界的にも見ても特殊な国内家電市場で過当競争をしないためにはどうすればいいかを考えて準備してきた。新販売スキームについては、うまくいっている商品もあればそうでない商品もある。いろいろ学習しながらヒット商品を作り出せるように、販売店からもエールもいただいている」(同氏)という。
国内家電事業において新販売スキームと両輪になるのが、欠品ゼロの実需連動SCMの構築である。2022年度は、ある家電量販店とドラム式洗濯機で効果を検証し、即納率90%以上、流通在庫半減という効果が得られている。2023年度は、この取り組みを複数社の家電量販店に広げていくことになる。
品田氏は「流通側とデータを共有することにより、実需連動型で欠品なく供給できる。量販店側も在庫を持たずに済むなどメリットは大きい。欠品なく、コンスタントに、安定供給することが重要だ。従来のSCMと比べて無駄なコストがかからない。これは、家電などのB2C事業だけでなく、パナソニックの売上高全体の6割を占めるB2B事業でも同じだと考えており、顧客を巻き込んだSCMの構築を進めたい」と意気込む。
SCMとの関連では、複数のカンパニーが事業会社としてのパナソニックとして一体になったことを受けて進めた調達の効率化で大きな進捗があったという。「四重苦の状況だったがキーデバイスにメスを入れて調達の統合を進めることができた」(品田氏)。また、鉄などの素材については、日本国内からの1社購買から、海外を含めた複数社購買に切り替えた。これらの取り組みでは、2022〜2024年度の3年間で250億円のコスト削減効果を見込んでいる。
モノづくりにおいてSCM(サプライチェーンマネジメント)と同様に重要なECM(エンジニアリングチェーンマネジメントでも、国内家電事業において試作レス化などの取り組みで開発リードタイムを半減させる取る組みを進めている。品田氏は「3年かかっていたところが1年半になれば、その分だけコストも削減できる」と述べている。
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