製造業DXを推進するシーメンス、バッテリーメーカー向けにデジタル基盤の提案強化:製造マネジメントニュース
シーメンスは、記者懇談会を開催し、統合デジタルプラットフォーム「Xcelerator」を中心に日本の製造業のDXを積極的に支援していく他、特にバッテリーメーカー向けの支援を強化し、日本発のバッテリーメーカーのデジタル基盤を世界に発信していく考えを示した。
シーメンス(日本法人)は2023年6月6日、記者懇談会を開催し、統合デジタルプラットフォーム「Xcelerator」を中心に日本の製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に支援していく他、特にバッテリーメーカー向けの支援を強化し、日本発のバッテリーメーカーのデジタル基盤を世界に発信していく考えを示した。
モノづくりデジタル統合基盤「Xcelerator」を核に支援
シーメンス 代表取締役社長兼CEOの堀田邦彦氏は大型計算機から始まったコンピュータ業界の変遷を例とし「これからモノづくりでも同様の大きな変化が生まれる」と警鐘を鳴らす。こうした中で「DXにより、デジタルをベースとしたデータを中心のモノづくりにいち早くシフトすることが必要だ」
(堀田氏)と訴える。
モノづくりのデジタル化を進めるためには、モノづくり工程に合わせたさまざまなアプリケーションシステムと共に、製造現場などのOT(制御技術)領域からのデータの収集や活用の仕組みが必要になる。「ITからOTまで全てを提供できることがシーメンスの強みだ」と堀田氏は強調する。
これらのシステム構築を進めるために、現在提案に力を入れているのが、効率的で柔軟なモノづくりを実現するプラットフォームである「Xcelerator」である。「Xcelerator」は、フィールド機器やエッジコンピューティング層から、クラウドやアプリケーションソフトウェア層までの各システムを連携させ、これらのさまざまなソフトウェアをモジュールとして組み合わせることで機能を実現させられる統合開発ポートフォリオである。「Xceleratorを通じてより容易にさまざまなデータの収集と活用を行えるようにする。そういうモノづくりのプラットフォーマーの立ち位置を目指す」と堀田氏は語っている。
バッテリーメーカーのDX支援に重点
その中でも特に重点的に今後強化するのが、バッテリーメーカー向けのスマートマニュファクチャリングの提案だ。今後リチウムイオンバッテリーの市場はEV(電気自動車)向けなどを中心に大幅に拡大すると予測されている。その中で、電池製造の領域はプロセス系製造と組み立て系製造の組み合わせが必要で、それぞれの効率化やモデル化などが確立されておらず、急速に工場を立ち上げて生産量を大きく増やすということができない状況だ。
そこで「バッテリーのスマートマニュファクチャリングへの支援をシーメンスのソリューションで実現すると共に、確立されていない領域では二人三脚で研究開発を進め仕組みの確立を図る」とシーメンス デジタルインダストリーズ デジタルエンタープライズ&ビジネスディベロプメント部 部長の鴫原琢氏は述べている。
既にドイツのハノーバーメッセでは、ノルウェーのEV向け電池スタートアップFREYR Batteryとの協業も発表。生産設計、計画、シミュレーション、製品設計および生産工程全体のオートメーションなどで、バッテリーの設計と製造の全工程で提携し、電池生産に最適な形を作り上げる取り組みを進めている。シーメンスは、製品ライフサイクル管理(PLM)、製造実行システム(MES)、産業用エッジコンピューティングおよびIT/OT接続のためのツールなどを提供しているという。
鴫原氏は「リチウムイオン電池はスマートフォン向けなども含め、さまざまな形で長く生産されてきたが、EV向けでは未知な領域もまだまだ多い。そういうところの支援を進めていく。日本のバッテリーメーカーも部分的にはシーメンスのツールのユーザーであり、提案は進めているところだが、今回のEV向けの大規模なシステムソリューション構築についてはこれからというところなので、日本での実績を作り早く対外的に示せるようにしていきたい」と今後の抱負について述べている。
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