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品質管理にとどまらないTQM×IoTの効果+ISO9000の維持にIoTを活用せよトヨタ式TQM×IoTによる品質保証強化(8)(2/3 ページ)

本連載は、品質管理の枠組みであるトヨタ式TQMと、製造現場での活用が期待されるIoT技術を組み合わせた、DX時代の品質保証強化を狙いとしている。第8回は、品質管理にとどまらない他業務におけるTQM×IoTの活用効果に加えて、ISO9000シリーズを維持する上でのIoTの活用法も紹介します。

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IoT活用でISO9000シリーズの維持負担を大幅に削減する

 大手の製造業でISO9000シリーズ(以下、ISO9000)を取得していない企業はほぼないといっても過言ではないでしょう。日本の製造業が品質ブランドを構築するため、平成初期にはISO9000を一斉に導入していました。その後も維持を続けている企業がほとんどです。

 しかしながら、ISO9000を維持するために現場では膨大な紙での記録を行っており負担がかかっています。また、審査業務においても、現場の膨大な紙を集めてきて審査員に提示していては時間がかかりすぎるので、ある程度事前に審査で聞かれる内容を品質保証部門が資料をまとめて提示しています。これらの資料まとめは人が介在しますし工数もかかります。

 最近は製造業で多発している検査不正問題を考慮すると、自社の品質保証のマネジメントが正しく行われているのか不安視している経営者はかなり多いのではないでしょうか。このため、現場の生産実態を正しくつかむために、IoTを用いて製造条件や検査結果の生データを直接、設備や検査機から収集して改ざんできないような仕組みを構築する動きが加速しています。

 そうなると、ISO9000の紙での記録はどこまで行う必要があるのか、審査時のエビデンス提示はどのように行えばよいのでしょうか。

 ISO9000のベテラン審査員に確認したところ、IoTの活用によって記録媒体を紙から電子データに代替できるそうです。例えば検査結果は、検査記録用紙を検査データに置き換えられます。この場合、審査の際に検査検索画面で、工場別/工程別/製品別/検査項目別の検査結果を、期間やロットNo.などで絞り込んで見せる方法に変わります。そうなると検査記録用紙の保管や検査結果をまとめた資料作成も不要になります。

 ただし、業務手順書に「検査結果は検査記録用紙に記録し、検査記録用紙を保管する」と記載していると。審査員はそちらの業務手順が正式な業務手順と捉えますので、審査時に「こちらに書いてある資料を提示してください」と指摘します。そのため、IoTを取り入れてデジタル化した場合には、業務手順書も「検査結果は検査機のデータを自動で収集し保存する。検査結果は検査検索画面で確認する」と書き換えておく必要があります。そうすれば、審査員は「検査検索画面を見せてください」と指摘するように変わりますので、検査記録用紙には触れなくなります。

 以下に、IoT活用によって得られるISO9000の維持負担の削減効果を挙げます。

  • (1)記録業務の自動化により工数を削減できる
  • (2)記録した資料の保管がなくなり保管スペースが不要となる
  • (3)審査時の事前準備がなくなり審査員にシステムの画面を見せればよくなる

(1)記録業務の自動化により工数を削減できる

 製造業ではおおむね以下のような資料を記録しています。他にも個別製品や工程に沿って専用帳票がありますので種類はもっと多いでしょう。これらの記録は、IoT活用によってかなりの割合で自動化されます。

  • 検査記録
  • 品質不具合連絡表
  • 生産日報
  • 設備点検記録
  • 設備保全記録

(2)記録した資料の保管がなくなり保管スペースが不要となる

 資料の保管対象は(1)で挙げた記録の他、資材の現品票も入ります。資材のロットNo.、製品のロットNo.などとのひも付けを示すエビデンスになるからです。資材の現品票は、量が多いことや運用上の利点から倉庫内で保管しているケースがほとんどです。しかし、実際に必要になるのは不具合が顧客に流出した際であり、ほとんど使われないことを考えると、保管場所はデッドスペースとなります。これを電子データの記録に代替できれば保管場所は不要になりますし、万が一必要になっても探し出す手間を省けます。

(3)審査時の事前準備がなくなり審査員にシステムの画面を見せればよくなる

 これらのIoT活用システムでデジタル化した記録データを表示するのにはノートPCが1台あれば十分です。審査時にノートPCを持参して、審査員に見せれば済みます。事前に現場から大量の資料を集めたりまとめたりする手間は不要になります。

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