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越前/鯖江を「産業観光の聖地」にする、大反響モノづくりイベント仕掛け人の夢ワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(5)(2/4 ページ)

本連載では、厳しい環境が続く中で伝統を受け継ぎつつ、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。今回は福井県鯖江市と越前市、越前町で開催される産業観光イベント「RENEW」の発起人である新山直広さんにお話を伺いました。

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産業観光で伝統工芸製品の魅力を程よいコスト感で伝える


RENEW2022の様子[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞

――産業観光(※)は、産地に足を運び、自分の目で見て体験してもらうのがポイントだと思います。RENEWはまさに産業観光の取り組みの1つだと思いますが、産業観光が大事だと考えたきっかけなどはありますか?

※:産業観光とは「その地域特有の産業にかかわるもの(工場、職人、製品など)、ならびに昔の工場跡や産業発祥の地などの産業遺構を観光資源とする旅行のこと」(総合研究所のWebサイトより引用)

新山さん 大きく分けて2つあります。1つ目は、費用の話です。結構前から「モノづくり企業も自分で商品を作って自分で売ろうぜ」という動きがあります。作った商品をPRしたいから展示会に出展してみようとなるわけですが、ブースを借りるだけでも50万円くらいかかります。装飾や運搬、往復の交通費を加えると100万円を超えてしまうこともあるんですよね。規模の小さい企業には費用負担が大きすぎるのではないかと思いました。

 2つ目は、伝統工芸の製品というものは、店の陳列棚に置いてあるだけではその価値が伝わりにくいのではないかということです。100円ショップの漆器っぽい器と、1万円の漆器の器って、実は見た目だけではあまりその違いは分からないものです。どうやったら漆器の良さが伝わるかなと思った時に、やっぱり地域や産地に来てもらって見てもらうのが一番だと感じました。

――産業観光に関して、参考にした他の産地などはありますか?

新山さん 東京都大田区や蔵前周辺で開催されていたオープンファクトリーイベントや、新潟県燕三条市の「工場の祭典」などを見学しました。参加されている職人のみなさんがすごくいきいきとされていて、なんて素晴らしいんだと感動しました。それを福井県でもやりたいと思いましたね。

――そして、2015年にRENEWがはじめて開催されたんですよね。

新山さん 実は2013年頃、鯖江市役所に在籍中にRENEWのようなイベントをやりたいと思い、部長に直談判したことがありました。たしか11月頃だったと思います。

 でも、来年度の予算要求の時期はもう終わっていて無理だと分かり、翌春には独立する予定だったので、もう自分たちでやろうかという決断に至りました。

 予算という意味では行政は強いバックアップになりますが、参加しているモノづくり企業が主体になった方がイベントとしてもっと盛り上がるのではないかと思いました。また、行政の予算ありきで始めて、予算が尽きた時にイベントも終了するケースが結構見受けられていたので、だったら自分達だけでやったほうがいいんじゃないかと。

――しかし、自分たちで開催するのは大変なこともたくさんありますよね。

新山さん 初年度の参加は22社だったのですが、普段から活動的にいろいろ取り組んでいる数社は、比較的最初からイベントには乗り気でした。でもそれ以外の方々からは、「なんで工房なんか見せなきゃいけないの」「技術盗まれたらどうするの」という声が聞こえてきました。


反発を受けた新山さん 出所:ものづくり新聞

――どうやって説得したのでしょうか。

新山さん 谷口眼鏡の谷口康彦さんらと共に「今まで行政頼みで失敗してきたんだから、そうじゃないイベントをやってみようよ」と声を掛けました。谷口さんが「参加費2万円ずつなんて、2回くらい飲んで遊ぶのを我慢したらいけるやろ! 失敗してもいいからやろう」とみんなを口説いてくれたのは大きかったですね。そうやって、小さく小さくスタートしました。

――最初はたくさん人を呼ぼうという感じではなかったのですか?

新山さん そうですね。ノリとしては、とにかく失敗してもいいからやってみようかという感じです。でも最初からビジョンは明確で、「100年、200年後もこの場所でモノづくりが続いている」ということが大事で、そのためにやっていこうと当時から考えていました。

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