金型データや環境対応部品で新たなビジネスを、オムロンの新たな電子部品戦略:オムロンの電子部品戦略(前編)(2/2 ページ)
オムロンは、電子部品事業の戦略説明会を開催するとともに、研究開発部門を集約した岡山事業所を公開した。本稿ではまず前編として部品事業戦略について紹介する。
「グリーン」や「デジタル」で新たな付加価値創出を
一方、新たな提供価値による基盤ビジネス強化の1つのポイントとして位置付けているのが環境を考慮した「Green」領域だ。「商品(Products)」「生産(Process)」「調達(Purchase)」の3つの観点で取り組みを行い、これらを連動した商品群や技術、ソリューションの提供でサプライチェーン全体のカーボンニュートラル実現に取り組む。商品面では具体的に、環境対応機能を充実させた「Green Products」を設定し、これらの対応商品のラインアップを増やしていく。また生産面ではクリーンエネルギー生産品の販売を開始する。さらに、調達面ではCO2排出量の見える化を推進していく。
江崎氏は「顧客の製品には、1つの製品でもたくさんの電子部品が搭載されることが多い。そういう意味で電子部品事業としてカーボンニュートラルに貢献できることも多い。先駆けて取り組み価値を提供していく」と力を込める。
もう1つの新たな提供価値として強化していくのは「Digital」領域だ。モノだけでなく必要なデータを提供することで新たな付加価値創出を目指す。電子部品選定に必要な情報発信の強化を進める他、新たに製品の品質や設計工数を削減するデータの提供などを進めていく。さらに、設計データや金型データの商品化なども検討を進める。
「品質データや設計データ、金型データの提供については、まだ現実的なビジネスにつながっているわけではないが、顧客企業にとってもメリットがあるのではないかと想定し、提案を進めているところだ。そのために社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)も積極的に進める。特に設計データや金型データについては、知財面での重要性などもあるので、何を守るのかを考えながら契約を行い、話を進めていくことになるだろう」と江崎氏は考えを述べている。
さらに開発や生産の「Speed」の強化も進める。社会課題を起点にモノづくりの上流からコンカレント開発を推進。新商品の開発スピードを高める。研究開発の体制も再構築し、研究開発部は岡山事業所に集約し、開発リードタイムの半減を目指して取り組んでいるという。「従来のように自社の技術を磨くだけではなく、社会課題から考えて必要なモノを必要なタイミングで提供できるようにする。岡山事業所に集約したさまざまな部品の技術者の知見を組み合わせるほか、顧客企業の技術者にも参加してもらい協業により、新たな価値をより短い時間で形にできるようにする」と江崎氏は狙いについて語っている。
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