ArmのGPUは第5世代へ、「DVS」でメモリ帯域幅を40%削減:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
Armが民生機器向けプロダクトIPセット「Arm Total Compute Solution(TCS)」の最新パッケージ「TCS23」を発表。GPUアーキテクチャを第5世代に刷新するなどGPU性能の向上が最大の特徴となる。
Armは2023年5月29日、民生機器向けプロダクトIPセット「Arm Total Compute Solution(TCS)」の最新パッケージ「TCS23」を発表した。2022年6月発表の「TCS22」で投入した新たなGPUプロダクト「Immortalis(イモータリス)」でモバイルゲーミング初のレイトレーシング対応を実現したのに続き、GPUアーキテクチャを第5世代に刷新するなどGPU性能の向上が最大の特徴となる。
同社は2021年3月に発表した最新アーキテクチャ「Armv9」と合わせて、スマートフォンやテレビ、セットトップボックス、スマートウォッチなどの民生機器向けプロダクトIPについて、各機器に最適なCPUとGPU、システムIPをセットで用意するTCSの展開をスタートさせた。今回のTCS23は、TCSとして初投入となった2021年5月発表の「TCS21」、2022年6月発表のTCS22に続き第3弾となる。
アーム 代表取締役社長の横山崇幸氏は「日々のデジタル体験の中核となるスマートフォンへのコンピューティング性能の要求がさらに高まっている。今後は、フレキシブルディスプレイやAR(拡張現実)ウェアラブルなどの新たなフォームファクターが市場に浸透し、生成AIや大規模言語モデルの登場により新たな機能が生まれていくと予想しており、モバイルデバイスへの関心とイノベーションは今後も加速していくだろう。かつてない最高のプレミアムスマートフォンを実現できるTCS23に期待してほしい」と語る。
TCS23における最大の進化ポイントになるのは新たなGPUである「Immortalis-G720」である。TCS22で発表した「Immortalis-G715」で第4世代となったGPUアーキテクチャを第5世代に刷新しており「Arm史上最も消費電力効率が高い」(アーム 応用技術部 ディレクターの中島理志氏)という。GPUのデータフローを最適化する新たなシェーダ技術「DVS(Deferred Vertex Shading)」を採用するなどして、前世代と比べて性能を15%向上するとともにメモリ帯域幅を40%削減することに成功した。
DVSは、これまでバーテックスシェーダーとフラグメントの処理で逐次にメモリアクセスしていたところを、バーテックスシェーダーの処理を遅らせてメモリアクセスを1回に集約することでメモリ帯域幅削減を実現している。「今後ArmがGPU技術を進化させていく上で根幹になり重要な技術になるだろう」(中島氏)という。
また、中島氏は「これまでと比べても性能向上の進化が最も大きい。さらに、性能を向上すると半導体シリコンのダイサイズ(シリコンエリア)もかなり大きくなるという課題があったが、Immortalis-G720はImmortalis-G715と同じ仕様で製造した場合のシリコンエリアへのインパクトは2%程度しかない。競合他社が発表した最新のGPUアーキテクチャと比べても、シリコンエリアへのインパクトの小ささはかなりのものだ」と強調する。
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