製造業のDXプロジェクトはなぜ失敗してしまうのか?(前編):DX時代のPLM/BOM導入(12)(3/4 ページ)
今回から本連載最終章です。DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトが失敗する原因について、グローバル製造業の経営企画部門所属の音更さんと経営コンサルタントの鹿追さんに、BOM(部品表)やPLMを軸に議論してもらいましょう。
(3)結果指標を意識していない
次は「結果指標を意識していない」ことによる失敗です。
どういうことですか? 言葉としてはなんとなく分かりますが、どういう状況を想定しているのでしょうか?
結果指標とは、プロジェクトの成功基準のことです。いつまでに何をどのレベルで達成するのか、というプロジェクト目標設定を指します。DXプロジェクトの構想企画で、目標設定をしているはずですが、プロジェクトの実行に入ると、本来のプロジェクト目標のことを忘れてしまって、システムを導入することに夢中になり、システム導入そのものが目的にすり替わることがあります。
経営改革が目的なのに、いつの間にかシステム導入が目的に変わる、というのはよく聞く話です。
目標を見失っていなければそれでもいいのですが、忘れ去られるケースが多々見られます。成功企業の事例を図で説明しましょう。これは当初、事業部ごとに導入したPLMシステムを個別に保有していて、複数のPLMシステムの運用コストが経営を圧迫していた企業の例です。この企業では、事業部別の製品開発プロセスを標準化すると同時に、PLMシステムを統合し、運用コストを大幅に削減することを目的としたプロジェクトを開始しました。
その時の結果指標として、最終ゴールの3年後に製品開発プロセス標準化率90%、全社ITコスト削減率30%を掲げたのです。この企業では、最終目標だけを設定するのではなく、1年ごとに目標が達成されているかを各事業部の推進リーダーが経営幹部に報告することを義務付けました。実際には、プロジェクトチーム内では、月次で目標の達成状況に対してモニタリングが実施されたのです。
成功企業では、これくらい経営的な成果に対するコミットメントを求められます。逆に失敗企業では、予算執行が承認されると成果についてはほとんど触れられずに、システム導入したら終了、目標達成についてのレビューを行っていません。
多くの企業が後者に該当するような気がしますね。成功企業の秘訣はあるのですか?
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)というプロジェクト管理組織を設置することが一つの手段です。業務改革やシステム導入の推進チームはそれぞれのタスクを遂行するのですが、それらの進捗や課題の解決、プロジェクト目標の達成度などをモニタリングする専門組織をプロジェクト内に設置するのです。
どんな人がアサインされるべきなのでしょうか?
プロジェクトマネジャーやワーキングリーダー、それ以外にコンサルタントに入ってもらって、客観的にプロジェクトを評価する企業が増えていますよ。
なるほど、プロジェクトマネジメントが重要性だということですね! 確かに、PMOを導入する企業が多いとよく聞きます!
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