パナソニックHDは北米車載電池を重点強化、3拠点目を新設し2030年度に200GWhへ:製造マネジメントニュース(2/3 ページ)
パナソニック ホールディングスは、グループ戦略を発表。環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」をより具体化して取り組みを進めていくとともに、重点領域として「車載電池」「空質空調」「サプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェア」などを位置付け、積極的な投資を進めていく方針を示した。
重点投資領域の車載電池は北米に集中
重点投資領域として最も大きいものが、車載電池である。全社戦略で地球環境への取り組みを強化する中、車載電池のCO2削減貢献量は非常に大きく、5900万トンの削減量が期待できる。加えて、北米市場では2030年にかけて年平均成長率(CAGR)35%と予測されており、急速な拡大が進む見通しだ。さらに、パナソニックグループが得意とする円筒形車載電池のエネルギ―密度や安全性、コストメリットが再認識され引き合いが強まっている。
楠見氏は車載電池の競争優位性について技術面と生産面での強みを訴える。技術面では「電池技術開発の先駆的企業として、エネルギー密度の進化を積極的に進めており2030年までに1000kW/Lを達成できる見込みだ。さらに、世界で初めてコバルト含有量5%以下を達成し技術的にはゼロ化を視野に入れるなど、非レアメタル化を進めている点も強みだ。EV(電気自動車)200万台相当に市場供給する中で電池起因の重大事案の発生がゼロで、安全性の面でも高い評価を得られている」と楠見氏は語る。
生産面では「北米最大の電池工場をいち早く立ち上げ、安定稼働、安定供給を続けてきたオペレーション力を生かす」(楠見氏)。ネバダ州のギガファクトリーでは、当初目標を10%以上上回る生産性を実現している他、現在建設中のカンザス州の新工場でもこれらの知見を生かし投資効率を大幅に改善した形で立ち上げが進む見込みだという。
さらに、研究開発体制も整備する。大阪府の住之江に2024年に新たな生産技術開発拠点を新設する他、大阪府の門真市に新機種や次世代機種の開発や材料の源流開発を行う新拠点を2025年に新設する。
こうした強みを生かし、北米を中心に事業拡大を積極的に推進する。円筒形の顧客拡大を進め、LucidやHexagon Purusへの供給契約を締結。さらに「新たな顧客開拓も推進中だ」(楠見氏)。カンザスの新工場は2024年度内に生産を開始する予定で「2170」セルの量産を行う。新たな車載電池である「4680」セルは和歌山工場で生産を開始し安定化させた後、2030年までに北米拠点での大規模展開を計画する。北米での生産拠点も現在のネバダ州、カンザス州の工場に加え新拠点の立ち上げを検討する。2030年度までに総生産能力は200GWhまで高める計画だ。
この車載電池の拡大を「Panasonic GREEN IMPACT」でのCO2削減貢献量実現の中核としていく。Redwoodとのリサイクル材の長期調達契約の締結に加え、Nouveau Monde Graphiteとの再生可能エネルギー生産材調達契約の覚書締結を行い、低環境負荷のサプライチェーン構築を進める。2030年度にはネバダ州の工場におけるサプライチェーン全体でのCO2排出量を2022年度比で半減させる計画だ。加えて、CO2削減貢献量については、2030年度には車載電池全体で2022年度比5倍となる5900万トンを実現する。
北米を重点的に強化する理由について楠見氏は「米国のIRA法(※)の影響が全くないかというとそうではない。こういう枠組みがあるのは既にネバダ州で生産を行っている当社には1つの大きなチャンスだ。これを生かしながらIRAの趣旨に沿った投資を進めていく」と述べている。
(※)IRA法:Inflation Reduction Actの略で、過度のインフレを抑制する目的で2022年8月に米国で成立した法律。エネルギー関連製品などに対する税控除などを行っている。EV向け電池などの販売に関する税控除(もしくは直接補助)に関しては、Section 45X(Advanced Manufacturing Production Credit)で示され、米国内で生産した電池セルを販売した場合、1kWh当たりで35ドルの税控除が受けられる。パナソニック ホールディングスでは、既にEV向け電池セルの生産を行っているネバダ工場や、新たに2024年に稼働予定のカンザス工場が対象となる
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