インダストリー5.0時代に生きる道、日本型プラットフォームビジネスの論点:インダストリー5.0と製造業プラットフォーム戦略(5)(3/5 ページ)
インダストリー4.0に象徴されるデジタル技術を基盤としたデータによる変革は、製造業に大きな変化をもたらしつつある。本連載では、これらを土台とした「インダストリー5.0」の世界でもたらされる製造業の構造変化と取りうる戦略について解説してきた。最終回となる第5回では、今まで触れてきた製造業がプラットフォーム戦略を取る際の論点について整理する。
協調領域の戦略的な見定めとエコシステム活用によるスケール
プラットフォームビジネスにおいては、自社で差別化ができるコア領域に注力しつつ、エコシステムを活用して効率的にスケールしていけるかが重要となる。日本の製造業は自前志向が強いといわれてきたが、この「効率的にスケールする」という観点において、自社の資産、資源、顧客基盤、開発力が事業拡大の限界になってしまっているケースが多い。特に、アプリケーションの拡充やソリューション導入を提案するコンサルティング能力、システム統合を行う人的資源やノウハウ、能力が不足している。一方、先行企業では「他社と組んでいかに有効なエコシステムを形成するのか」に注力をしている。
図4は主なB2B(企業向け)プラットフォームで形成されるエコシステムの分類である。それぞれを構成する主なプレーヤーは以下の通りだ。
- 需要者(ユーザー):プラットフォーマーとして価値を提供する対象
- コンサルティング/インテグレーションパートナー:ユーザーに対して導入支援を行ったり、サービスオペレーションの設計を行ったりする
- 接続ハードウェアパートナー:プラットフォームに対して接続するハードウェアを用意するパートナー。データの蓄積やネットワークに関する機器メーカーなどが対象
- テクノロジーパートナー:プラットフォームの機能をAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術などにより高度化する役割を果たす
- 提供者(サプライヤー):蓄積されたデータを基にユーザーにソリューションを提供する
- アプリ開発パートナー:データ活用を中心としたアプリケーションの開発を行う
- ノウハウパートナー:産業面での知見やノウハウ面で協力をする
サービスの提供(サプライヤー)は、アプリ開発パートナーやノウハウパートナーと共同で行うこともある。IT開発力を持たない企業であっても、アプリケーションの構想や問題意識などがあれば、プラットフォームを介してアプリケーション展開をすることも可能だ。そこがエコシステムのポイントである。
自社のリソースのみで顧客に対するビジネス提供を行う場合は、自社のリソースが提供できる範囲がビジネスの上限になってしまう。しかしエコシステムを効果的に活用することで、ビジネス拡大のスピードは何倍にもできる。例えば、米国のマイクロソフトでは、自社の収益に対してエコシステムが9倍もうかることを基準とし、エコシステムの構築に取り組んでいるという。「エコシステムを栄えさせれば結果として自社収益を得られる」という考え方が、いかに浸透し、重要視されているかが理解できるだろう。
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