雪下野菜から着想、イチゴの鮮度を3カ月保つ新たな冷却庫「ZEROCO」とは:イノベーションのレシピ(1/2 ページ)
ZEROCOは、冷蔵庫、冷凍庫に次ぐ第3の鮮度保持ソリューションとして「ZEROCO(ゼロコ)」の事業を始動した。
ZEROCOは2023年4月12日、東京都内のZEROCOラボで会見を開き、独自の鮮度保持技術を備えた冷却庫「ZEROCO(ゼロコ)」の事業を始動したと発表した。
現在、3坪(約10m2)、5坪(約16.5m2)、10坪(約33m2)の広さを持つ3タイプのZEROCOを用意している。メインターゲットは、農業や漁業、畜産業などの第1次産業で、食品の保存期間を伸ばして販売時期を延長できるZEROCOの利点を生かし、第1次産業のサプライチェーンに変革を促す。これによって、生産および収穫した食品を最適なタイミングで販売できるようになり、第1次産業の収益性向上に貢献できるとする。
提供形態は未定としつつ、リースと販売の両方を検討しているという。将来は一般消費者も使えるZEROCOを開発することも視野に入れている。
急速冷凍設備より電力が約88%少ない
ZEROCOは、庫内の温度を0℃、湿度を100%弱にすることで、庫内に保存する食品の温度を芯温に至るまで均一に0℃に保てる。生鮮食品に含まれる水分をコントロールすることにも応じ、ZEROCOに生鮮食品を入れておくことで、新鮮なまま長期保存もできる。
例えば、イチゴは3カ月、桃は2カ月、メロンは3カ月、のどぐろは2週間、ウニは3週間、バラは4カ月の長期保存を実現している。
また、食品の冷凍前に予備冷却装置として使用すると、ドリップ(食材の水分が流れ出たもので)や冷凍焼け、着霜といった冷凍変性を防げる。このため、サプライチェーンの川上である漁業に導入することで鮮魚の神経締めやはらわた除去といった初期加工業務を削減し、鮮度が良いままでの保存が行える。加工の手間も減り商品寿命が延びることで、フードロス削減にも貢献する。
ZEROCO 代表取締役社長の楠本修二郎氏は、「現状、ZEROCOが対応できない食品は見つかっておらず、これまでの冷却技術では、おいしさを保てなかった卵焼きやショートケーキ、ステーキの冷凍保存にも使える」と話す。
ZEROCOで食品を冷却した後、食品の中心温度が最大氷結晶生成温度帯(−5〜−1℃)に到達した際にそこで30分以上温度を維持し冷凍する「緩慢冷凍」を行えば、急速冷凍と比べ約8分の1のエネルギーで冷凍食品を大量に生産可能だ。
冷凍した生鮮食品の解凍時に活用すると、冷凍前に近い品質で大量に解凍することができ、解凍時間の短縮にもつながる。通常の急速冷凍設備と比較して、スペースが広く一度に冷却可能な食品が多く、作業効率に優れる他、富士電機の調査によれば必要な電力が約88%少ない。
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