四半世紀で製造業のGDPと就業者は縮小、データで見る国内産業構造の変化:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(9)(1/2 ページ)
ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。第9回では、実質成長率に注目して日本と他国の比較を行っていきます。
停滞のターニングポイントとなった「1997年」
今回は、日本における産業構造の変化をご紹介します。使用する統計データは、内閣府が公開している「国民経済計算(GDP統計)」です。
日本は国内総生産(GDP)をはじめ、さまざまな経済指標が長期間停滞しています。ターニングポイントとなっているのが1997年という年です。1人当たりGDPや平均給与など、多くの経済指標はここから停滞していっています。
その1997年と直近の2021年のデータを比較することで、この約25年におよぶ停滞の中で産業構造にどのような変化が生じたかを可視化してみましょう。
「保健衛生・社会事業」などはGDPが拡大、一方で製造業は……
まずは、経済活動別のGDPから眺めてみましょう。
図1が経済活動別のGDPの変化を表したグラフです。総額を見る限りは、1997年の約541兆5000億円と2021年の約549兆4000億円の間に、そこまで大きな変化がないように思えるでしょう。ただ、GDPを業種別に見ていくと、規模の縮小している経済活動と拡大している経済活動が分かれている様が浮かび上がります。
規模を大きく拡大させているのは、「保健衛生・社会事業(約24兆2000億円→約45兆6000億円)」「専門・科学技術、業務支援サービス業(約26兆1000億円→約48兆1000億円)といった業種です。反対に、規模が縮小しているのは「製造業(約126兆9000億円→約112兆5000億円)」「建設業(約39兆3000億円→約30兆2000億円)」などです。
また、「公務員の仕事には付加価値がない」という意見を聞くことがありますが、「公務」を見ると実際には30兆円弱の付加価値を稼いでいることが分かります。さらに、公務員の仕事は「公務」だけでなく「保健衛生・社会事業」や「教育」などの経済活動の多くにも該当しますから、より多くの付加価値を生んでいると考えられるでしょう。
就業者の減少率が一番大きいのは建設業
次に、経済活動別の労働者数の変化を見てみましょう。
図2が経済活動別の就業者数の変化です。内閣府の統計では、労働者を「雇用者」と「就業者」で分けて集計していますが、労働者全体の傾向を把握するため本稿では就業者数について取り上げます。
就業者とは、あらゆる生産活動に従事する者をいい、雇用者とは、就業者のうち自営業主と無給の家族従業者を除くすべての者をいう。
日本は生産年齢人口の減少が進んでいますが、女性の就業率上昇と高齢労働者が増えたことで、就業者数自体は微増している状況ですね。経済活動別にみると、おおむねGDPの変化と似たような傾向を確認できます。
就業者数が増えているのが、「保健衛生・社会事業(約393万人→約901万人)」「専門・科学技術、業務支援サービス業(約477万人→約767万人)」です。特に「保健衛生・社会事業」は約25年間で500万人以上も増加しています。
一方、就業者数が減っているのは「製造業(約1348万人→約1044万人)」と、「建設業(約701万人→約464万人)」「農林水産業(約438万人→約244万人)」「卸売・小売業(約1183万人→約1042万人)」です。製造業では300万人も減少していることになりますが、減少率としては建設業の方が大きいようです。
ちなみに区分別にみると、2021年の就業者のうち約6169万人が市場生産者として働き、非市場生産者としては約419万人が一般政府、約232万人が対家計民間非営利団体※1でそれぞれ働いているようです。日本は、公務員の占める割合が6%程度ですが、主要国でも極端に低い水準であることもしばしば指摘されています。
※1:対家計民間非営利団体は労働組合や政党など、利益追求を伴わない公共サービスを家計に提供することを目的に、自発的に組織された団体。
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