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サステナブル設計とは? デジタルモノづくりとの関連性サステナブル設計とデジタルモノづくり(1)(2/3 ページ)

地球環境に配慮したモノづくりの実践はあらゆる企業に課せられた重要なテーマの1つだ。本連載では、サステナブル設計の実現に欠かせないデジタルモノづくりにフォーカスし、活用の方向性や必要な考え方などについて伝授する。

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サステナブル設計とデジタルモノづくりの関連性

 ここからはサステナブルな設計におけるデジタルモノづくりの関連性を考えていきたいと思います。

CAEとサステナブル設計

 サステナブルな設計では、製品に使用する材料の減量化が求められます。これは、CAEを活用することで検討できます。製品に求められる強度や性能を満たす形状はCAEを使用して検証でき、モノを実際に作る前にシミュレーションすることで試作回数の削減にもつなげられます。

 試作回数が減れば開発にかかる原材料の使用を抑えることができ、廃棄量の削減も図れます。また、モノを実際に作る前にシミュレーションで入念に検証できるため、手戻りの削減(開発期間の短縮)だけでなく、品質の向上や製品の長寿命化にも効果を発揮します。

 形状を解析するCAEだけでなく、「トポロジー最適化」や「ジェネレーティブデザイン」などを用いて、必要最小限の材料を使用した形状をコンピュータに計算させるということもできます。

VR/ARとサステナブル設計

 試作回数の削減に関していえば、「VR(仮想現実)」や「AR(拡張現実)」技術を活用することで、実際にモノを作ることなく、仮想空間や現実空間に設計中の製品を映し出し、1分の1のスケールで形状を確認したり、操作性や安全性などを検証したりできます。

Viewerとサステナブル設計

 Viewer(3Dビュワー)を活用し、紙ではなくタブレット端末で作業指示や工程管理を行うことで製造現場のペーパーレス化を図れます。使用する紙の量を減らすことは、森林伐採やゴミ焼却時のCO2排出といった環境負荷の削減につながります。

 Viewerを活用したペーパーレス化や業務改革を進めるには、2D図面での運用ではなく、3D CADでの設計、3Dデータ活用が求められます。これにより、3Dデータで工程設計や作業指示を作成できるようになり、作業者の理解度や作業品質の向上につなげられます。さらに、将来的には組み立て手順をARで映し出して作業者に指示するといった3Dをフル活用した業務改革に取り組むこともできるでしょう。

3Dプリンタとサステナブル設計

 パーツなどの形状によっては金属や樹脂の塊を削る(切削加工する)よりも、材料を一から積層していく3Dプリンタを活用した方が、材料使用量や廃棄物の量を削減できる、あるいは軽量化できる可能性があります。

 3Dプリンタの中には、再生プラスチックの利用が可能なペレット式3Dプリンタも登場しており、より環境に配慮したモノづくりを実践できる技術なども整いつつあります。

再生プラスチックの利用が可能なペレット式3Dプリンタ「EXF-12」(ExtraBold製)
図4 再生プラスチックの利用が可能なペレット式3Dプリンタ「EXF-12」(ExtraBold製)[クリックで拡大]

 保守パーツやオプションパーツの在庫、金型管理の削減を考えたときにも、3Dプリンタは効果を発揮します。3Dデータがあれば、いつでも3Dプリント可能なので、余計な在庫を保管する必要がなく、保管場所も不要になります。また、輸送に関して考えた場合、各拠点に3Dプリンタを配置しておけば、船やトラックなどで輸送する距離を減らすことができ、CO2排出や輸送コストの削減につなげられます。

 今後、設計者は3Dプリンタでの製作を前提とした設計力、「DfAM(Design for Additive Manufacturing:付加製造のための設計)」が求められる機会も増えていくことでしょう。

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