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設計者が学ぶべきデザイン基礎知識 〜かたちの種類〜設計者のためのインダストリアルデザイン入門(3)(1/3 ページ)

製品開発に従事する設計者を対象に、インダストリアルデザインの活用メリットと実践的な活用方法を学ぶ連載。引き続き“設計者が学ぶべきデザイン基礎知識”として「かたち」をテーマに取り上げる。今回は「かたちの種類」について解説する。

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 前回は、設計者が学ぶべきかたちに関する3つのデザイン基礎知識「かたちの比率」「かたちの種類」「かたちの対応付け」のうち、かたちの比率に関する内容をお届けしました。今回は、2つ目のかたちの種類について解説します。

 かたちの種類は前回同様、デザイン基礎知識の中でも普遍的で即効性が高い知識です。読者がこれらの知識をすぐに活用できるよう、本稿では知識の概略だけにとどまらず、業務での活用をイメージしやすいように具体例も含めて解説していきます。ぜひ、現在担当する製品に当てはめながら読み進めてみてください。

本連載を読み進める上でのガイドライン

  • 設計者のためのデザイン基礎知識
    テーマに関する概略と設計者が特に知っておくべきデザイン基礎知識を解説します
  • デザイン活用の具体例
    テーマに関する具体例を図やイラストを用いて説明し、設計現場のデザイン基礎知識の活用イメージが膨らむような解説を提供します
  • デザインと設計のよくある課題
    テーマに関して、開発現場でよく発生しがちなデザインと設計に関する課題とそのブレークスルーを著者の実体験に基づき紹介します

⇒ 連載バックナンバーはこちら

2.かたちの種類

 人は無意識にかたちを種類ごとに分類し認知しています。ここでいうかたちの“種類”とは、大きくは球や立方体、円すいといったなじみ深い基本造形の種類であり、さらには同じ基本造形でも細かい表現や組み合わせの違いによる種類を指します。

 後者についてはあまりなじみがないかもしれません。例を挙げるとすれば、同じ立方体でも角Rの大きい/小さいによって、優しい印象の立方体と緊張感のある立方体に、かたちを作り分けられるということです。

 かたちの種類の知識を身に付けて、それをコントロールできるようになれば、設計者はかたちに対してさまざまな意図を込められるようになります。そして、かたちに意図が込められるようになれば、設計者は顧客が抱くであろう製品に対する印象さえもコントロールできる可能性があります。

設計者のためのデザイン基礎知識

 これから作ろうとする製品のかたち、または目の前にある製品のかたちを考える際は、

  • 基本造形
  • 造形表現
  • 組み合わせ

の3つに着目することでかたちへの理解が深まります。

 「基本造形」とはそのかたちの基になる、角Rや曲面などが排除された基礎的なかたちです。そして、全てのかたちは基本造形の稜線や面に角Rや曲面などの「造形表現」を加えたり、それらを「組み合わせ」たりすることで説明可能ともいえます。一見複雑なかたちでも、これら3つの要素に基づいて考えれば、そのかたちの分類や再現が可能です。

基本造形

 「球や立方体などの立体の名前を思い付くだけ挙げてみてください」と問われたら、いくつのかたちを挙げられるでしょうか。球や立方体の他にも、三角柱、四角柱、円すい、三角すい、さらには正八面体、正十二面体など、挙げればきりがありません。本稿では、任意のかたちに最も近しい基礎的な立体を、そのかたちの基本造形と称します。例えば、一般的なPCの基本造形は四角柱(直方体)であり、ペットボトルの基本造形は円柱であるといえます。

 基本造形の種類は無数にあれども、製品デザイン業務において知っておくべき基本造形の大分類は「柱」「すい」「正多面体」の3つであり、小分類として頻出するのも「四角柱」「円柱」「球」くらいです。まれに「四角すい」や「円すい」が出てくる程度のため、多くを覚える必要はありません。ちなみに「パイプ曲げ形状」や「すり鉢形状」は、円柱や円すいの発展形状を基本造形としているといえます。

基本造形の分類
図1 基本造形の分類[クリックで拡大]

 ここで、皆さんの目の前にある工業製品を眺めてみてください。おそらく、その製品のかたちは上記いずれかの基本造形、またはその組み合わせで成り立っているのではないでしょうか。

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