先進国では最低クラス、日本の「実質的な」平均給与の成長率を検証する:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(8)(2/3 ページ)
ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。第8回では、実質成長率に注目して日本と他国の比較を行っていきます。
英国や米国は1.5倍以上に成長する一方で……
一方で、図2が各国の実質成長率の比較です。
日本はイタリアと並んで停滞傾向が続いています。他国は、名目成長率ほどではありませんが、基本的に右肩上がりで成長しています。
フランスやドイツは1.3倍以上、英国、米国や1.5倍以上となっています。つまり、他の主要国は物価が上昇している以上に平均給与が上昇しており、「実質的」な面でも豊かさが高まっているという状況ですね。こうした国に比べて日本の豊かさが相対的に増しているかというと、そうは言い難いでしょう。
名目成長率 | 実質成長率 | |
---|---|---|
韓国 | 5.03 | 1.86 |
アメリカ | 2.69 | 1.52 |
イギリス | 2.58 | 1.51 |
カナダ | 2.15 | 1.38 |
ドイツ | 2.06 | 1.34 |
フランス | 1.91 | 1.34 |
イタリア | 1.95 | 1.00 |
日本 | 1.01 | 1.05 |
実質賃金は低下し続けている?
OECDのデータでは、日本の平均給与は実質成長で横ばい傾向です。実は、日本の統計データでは、実質賃金指数が減少し続けているという指摘もあります。図3が毎月勤労統計調査で公開されている実質賃金指数のグラフです。
グラフで示しているのは1990年を基準(=100)とした指数です。ここでは「製造業」と、製造業も含めた全産業の「調査産業計」における実質賃金を表しています。調査産業計は、農林水産業を除くほぼ全産業を対象としているようです。
製造業はアップダウンがありますが、1997年以降は一定範囲に収まる横ばい傾向が続いています。一方、調査産業計は1997年をピークにして減少傾向が続いているようです。つまり集計対象とする産業によって「日本の実質賃金は減少を続けている」という指摘も当てはまり得るというのは、押さえておいた方がよいでしょう。
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